2015年11月04日

コラム

船上クルーズのカジノ
 2015年7月16日朝日紙に英国船籍のクイーンメリーⅡ2016ワールドクルーズの広告が載った。関空から乗船、香港、ベトナム、タイ、シンガポールをめぐるもので日本人はシンガポールから関空に飛行機で帰国するという1人31.8万円~83.8万円までの船室を案内している。その船内にはカジノがある。英国船籍カジノで「外国」でのカジノだから日本人も御自由にという趣旨だ。この船上カジノは日本の旅行会社で客を募集。乗船から下船まで(このツアーでは10日間)カジノ三昧になれるというもの。


国定忠治の辞世
 1850年12月21日、国定忠治は上野国大戸村で磔(はりつけ)の刑となる。忠治は博徒でお上に逆らい続け、殺人、関所破りなど数々の罪を犯しているから、本名長岡忠次郎が1500人の観衆を前に磔を演じるまで大衆のハイライトを浴びた。
 この磔刑は浅草弾左衛門らによって左右の脇腹から肋骨を刺し貫き肩上に出すもので、忠治は14回の間、一槍ごとに目を見開き、目を閉じ、突き抜きを繰り返したと記録されている。そして忠治は、辞世の句を残していた。記録された日記は二つあり、
 見てはらく なくして苦敷 世の中に せましきものは かけの諸勝負
 見ては乗 なして苦しむ 世の中に せましきものは かけの諸勝負   
とあり、ほぼ同一である。どちらかの写し誤りだろうか。それとも厳密にいうと死後誰かが作った可能性もあるが、大博徒の国定忠治にしての句であろう。


賭博とカルタ
 万治(1658~1661)時代の仮名草子『浮世物語』に「博奕の事」という章がある。
 「何時の比よりか南蛮よりかるたと言へる物を渡し 一より十二に至り四組になして勝負を決す 今は迦烏(かう)・追重(おいちょ)といふことをして 人の前にまきわたす絵を こなたより推して知る事 通力あるがごとくなる上手の鍛錬ある者 世に多くなりけるほどに これに出合ひて立つ足もなくうち負けて一夜のうちに乞食になる人多し」
 また、「博奕の異見の事」で「諸人の博奕をいましめんより 賽をつくることをとどめ かるたをつくるを禁制し給えかし」とある。
 「雍州府志」は48枚のカルタの解説を「畢意、博奕の戯なり」とある。
 このようにカルタは博奕として禁制のものであった。


「適度に楽しむパチスロ」で「存分にお愉しみ下さい」
2015年2月からパチンコ・パチスロホールの全国組織である全日本遊技事業協同組合(全遊協 任意加入団体)は加盟店の広告紙に「パチンコ・パチスロは適度に楽しむ遊びです」「のめり込みに注意しましょう」という広告文言を入れるようにした。
 ところで、近畿のパチスロ大手123(延田興業)は奈良県内2店で「総台数1723台のパチンコ・スロットのスケールでお贈りする」「123で存分にお愉しみ下さい」と一回り大きな文字で折り込み広告している。
 では、「適度に楽しむ」ことでパチンコ・パチスロで「存分にお愉しみ」はできるのか? 「適度」とは「ちょうどよい」「ほどよい」こと。「存分に」とは「思いのまま」「思い通り」のこと。だとすれば矛盾はないのだろうか。「ほどよい程度でパチンコ・パチスロを楽しむ」のと「思い通り」愉しむは同じことだろうか? 楽しむの楽は木の柄のある鈴に由来するガク・ラクの楽であり、愉しむの愉は心の安らぐことをいうとすれば同義である。適度は客観性をいい、存分は主観を中心に表しているといえる。
 いずれにせよパチスロ店の広告は客観的な適度より、思い存分にギャンブル(店の建前はゲーム遊技)をやってくださいというのである。


「責任あるギャンブル(Responsible Gambling)」
2002年にアメリカにNCRG(National Center for Responsible Gaming)「責任あるゲームのための全国センター」ができた。ギャンブルはほとんどの人が健全に楽しめるエンターテイメントとし、ほんの一部の「脆弱な者」が依存症に陥ることを抑止することでギャンブルの健全性を維持できるという考えを「責任あるギャンブル(Responsible Gambling R・G)」という(カジノ界はResponsible Gaming)。
 この考えを米国ゲーミング協会(AGA 1995年発足)が用いて、ギャンブル依存症と治療法への研究を財政的支援し(~2014年 2250万ドル)、「行動規範」「code of Conduct for Responsible Gaming」も明示した。この「行動規範」は業界側の客への相談対応レベルで、客側に「責任」を求める。欧州カジノ協会(ECA)も同様である。R・Gは客に責任を転嫁する「危険」な言葉である。


ガンジーの箴言(しんげん)
 ガンジーの箴言に「七つの社会的罪」(Seven Social Sins)の中に、「労働なき富」(Wealth without Work)と「道徳なき商業」(Commerce without Morality)がある。今のギャンブルやこれを商業化するパチスロからカジノまでのビジネスは、ガンジーのいう労働や道徳があるとは認めがたい。盗み、詐欺、賄賂はもちろん、人から奪った金も色は付いていないとの商業(取引)を許し、「良心なき快楽」(Pleasure without Conscience)を否定するのも「罪」である。




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2015年10月02日

奈良県営競輪研究(1)

2015年6月25日の奈良新聞記事によると・・・
 存廃問題でゆれる県営競輪が、平成26年度1億800万円の黒字になったという。所管の地域産業課は、24年度末まで9400万円の累積赤字があったが、25年度4800万円黒字計上、26年度導入の包括外部委託(28年度まで)による人件費削減と他県開催レースの受託場外収入が寄与したという。歳入は、前年度3.3%減、歳出3.6%減で受託外収入が100.9%増の2億7500万円に倍増したという。(奈良県営競輪あり方検討委員会での公表)
 奈良競輪の売上は近年減少を続けており、26年度業務の包括外部委託による人件費削減と他の競輪場の受託外収入で黒字化したという訳である。
 同紙による県担当課「大本営発表式」記事を確かめるべく、県に対し情報公開と情報提供を求めた。すると、県HPに委員会議事録が公表されているが、上記の会計報告の公文書はなく、早くて9月末に発表とのことだった。委員会は11月末にも競輪の存続をめぐる答申をまとめるという。一般へのパブリックコメント(公聴)などは全く考えていないともいうが、この包括外部委託を含めて情報公開を請求した。


偏頗な県と「あり方委員会」審議
 過去の経営不振と赤字の奈良競輪。全国的に競輪は不振。場外券販売やブランドレース、ガールズレースなど工夫しても結局、発売決定(全国の競輪関係自治体で調整)以外は宣伝から処理までの運営を「包括外部委託」したという。民間業者に丸投げしてやっと黒字化したというのが県事務局の報告で、これにより競輪は廃止せずとも黒字で何とかやっていけるとまとめたいのだろう。
 しかし、県と委員会の目的、審議の有り様、委員選定まで疑問が多い。
第1点:県と委員会は競輪の収益性を審議するというだけのものになっており、競輪の弊害や社会的影響を検討する視点がない。
第2点:奈良県にはこれまで競輪による弊害を考えた視点がない。委員会も県の所与のデータを前提として継続へのお墨付きを与えることしか考えていない。委員には競輪の弊害を問い糾す者もいない。
第3点:包括外部委託前は赤字、包括外部委託後は黒字というのは、逆にいうと「お役所経営」のズサンさないし不効率、不経済を自認するもの。本来開催、運営、経理まで全て県が公正に管理をすることで刑法の禁止する賭博開帳の例外とするのが競輪の趣旨だ。「民間丸投げ」は問題がある。


弊害を考えよ! 何のための競輪か、今その目的は失われている。


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2015年07月28日

事務局だより

全国市民オンブズマン大会「ギャンブル・カジノ分科会」開催のご案内

第22回全国市民オンブズマン兵庫大会
【日時】2015年9月5日(土)13時~18時 懇親会18時~20時
           6日(日)9時~12時
【場所】神戸市 神戸学院大学ポートアイランドキャンパスB号館

 全国市民オンブズマン連絡会議は、年に一度、全国の市民オンブズマン活動をする人や関心のある人が一堂に会する大会を主催しています。今年は上記の日程となりました。
 初日は全体集会で全国の市民オンブズマンの取組の基調報告や上脇教授による講演会のあと、特別調査報告や特別テーマ報告、また全国各地の報告や包括外部監査評価班による通信簿発表や表彰などがもたれます。
 二日目は分科会です。政務活動費、地方自治法の改正ないし住民訴訟制度改革の問題、さらに地方議会の分科会の開催が既に決まっています。
そしてこれらに加え、ギャンブル問題・カジノ問題を話し合う分科会を企画しました。本テーマは昨年に引き続くもので、IRカジノに反対し依存症への認識を深めてギャンブル問題に取り組む「ギャンブルオンブズマン」「依存症問題対策全国会議」などが今年も中心となって企画しています。
 ご不明な点等ありましたら、本企画担当 井上までご連絡下さい。
 皆様の御参加を心よりお待ちしております。

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2015年06月18日

【投稿】ギャンブル依存症と「発達障害」   中谷慎一

 私は元小学校教員で発達障害のある子どもたちの支援を担当してきました。
 初めての投稿ですが、教員のときに経験した二つのエピソードを紹介します。
エピソード①「自分は勝つ」と思い込む
 高機能自閉症という診断を受けた児童は、「じゃんけんで決めようか」と聞かれると、「うん」と言って、ジャンケンをしましたが、負けると大泣きに泣きました。
 なぜなのか? ジャンケンしたら自分が勝つものと思いこんでいたのです。負けるとは思っていないので、「じゃんけんで決めようか」と問われたら、「うん」と答えるのでした。
 その子がジャンケンできめるときには、「ジャンケンで負けることもあるよ。まけてもいいのか」確かめるようにしました。
エピソード②「くじは当たる」と思っている
 LDの診断を受けていた児童が「先生は宝くじを買わへんの?」と聞いてきたことがありました。
 私が買わないと答えると、「なんで、当たるで」と不思議そうな顔をしました。宝くじは買ったら、当たるものと思っているのでした。

 発達障害の子どもと一緒に暮らしていて、発達障害の人がギャンブル依存症にもなりやすい弱さをもつことが分かりました。
 「ギャンブル依存症を生む公認ギャンブルをなくす会」のことを「しんぶん赤旗」で読み、大阪でギャンブル被害をなくす活動をしている人たちがいることを知りました。
 障害のあるなしにかかわらず、誰もが安心して暮らせる社会をつくるために「ギャンブルオンブズマン」活動に参加したいと思っています。
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2015年06月06日

【裁判情報】

 大阪地裁 平成26年(ワ)第6683号事 宝くじ販売差止請求事件
 次回期日:平成27年7月8日(水)午後1時15分  808号法廷(傍聴可)
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2015年04月22日

【裁判情報】

大阪地裁 平成26年(ワ)第6683号事 宝くじ販売差止請求事件
 次回期日:平成27年4月22日(水)午後1時15分  808号法廷(傍聴可)
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2015年03月10日

【裁判情報】宝くじ販売差止請求事件

大阪地裁 平成26年(ワ)第6683号事 宝くじ販売差止請求事件
 次回期日:平成27年4月22日(水)午後1時15分  808号法廷(傍聴可)
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2014年10月22日

【裁判情報】

大阪地裁 平成26年(ワ)第6683号事 宝くじ販売差止請求事件
 次回期日:平成26年11月19日(水)午後1時15分 808号法廷(傍聴可)

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2014年03月18日

カジノ反対の歌・唄シリーズ⑥ ラブ・イズ・オーバー

(欧陽菲菲)(昭和58年)

♪Money is over(oh・カジノ 悲々)
  Money is over 悲しいけれど 終わりにしよう きりがないから
  Money is over ワケなどないよ ただひとつだけ カケに負けたため
 Money is over 若いあやまちに 笑って言える 時でないだろ
  Money is over 泣くしかないだろう 負けた事は 早く忘れて
 私はカジノを忘れはしない  誰に責められても  忘れはしない
 きっと最後の賭けだと 思うから                   
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2013年11月01日

みずほ銀行と宝くじ詐欺商法

 みずほ銀行は、宝くじ発売元の全国都道府県や政令市から委託を受けて、①宝くじ(ロト、ナンバーくじを含む)の発券、②販売(再販売委託業務の管理監督を含む)、③当せんの決定、当せん金の支払事務、④法定収得金の発売自治体への納入、⑤委託料の収納報告までの会計精算と報告といった処理を行う。販売額の15%弱は販売関係経費で、その中から収益を得ている。
 ところで、近時宝くじに関して詐欺商法、悪徳商法が絶えない。当せん金の受け取りに係わる詐欺もあるが、今最も堂々とされている詐欺でみずほ銀行も発売元も見逃しているのがロト6などの当せん番号予想にまつわるものだ。当せん番号を教えるとしてその手数コーチ料をとる詐欺で、何十万円もの詐欺被害が届けられると警察はこれを捜査する。これ以外に確実な予想方法があるとの教本を買わせる、また確実に当てる機器を売るという詐欺もある。3万円以上でルーレット様のもの(価格は1000円以下?)を確実に当てるとして売るのはどうか。「必ずホームランが打てるバット」を売る以上の詐欺である。確かに打つことは可能だが、もし素人が10回打って9回ホームランと宣伝し、本来1万円のバットを100万円で売れば詐欺になろう。そんなことを信じる者がバカだといわれるのを恥じて訴えないだろうと狙った悪徳商法があるが、これは詐欺行為である。
 これらは新聞雑誌で案内され、申し込めばパンフが送られてくる。そのパンフには、この金運ルーレットで千万、億円が当たったとして札束を目前に重ねたその人の顔写真を名前付きで紹介するものが続々と載せられている。
 実際には偽名だろうし、その人がこんな使われ方をするとして写真を撮ったのかも不明だ。正式な会社名・代表者名はないし、○○本部長といった差出人も偽名だろう。豪華なパンフをつくり、1個約3万円で今回350個限定販売するという。(パンフ作成や送料からいって350個では商算が成り立つのかと思うのは余計な心配か。)1000万円どころか実際には3500個売れば1億円を稼ぐのだろう。
 こんな詐欺商法について、みずほ銀行に問い合わせると、ロトの当選数字を確実に当てる方法はないことや、写真入りのパンフの詐欺的販売であることは認めるも、①自らこの営業をしたり協力したりはしていない、②被害届が出されて警察が捜査するなら協力する、③しかし、自らは動かないし何もしないと言明した。自らの受託事業を妨害する不法・不当な詐欺商法を摘発しないのかと言っても、知らん顔をするというのだ。
ついでに言えば写真にある億円に達する札束の写真は偽札だ。100万円の帯に銀行の名もなく、番号は同様であり、これを印刷した偽札との注意書きもない。ちなみに1000万円を超える札は縦・横に銀行名の帯が入っている。登場する人物は自らがどういう役割をしているかを知って謝礼を得ているであろうから「共犯」である。
これに関係する「詐欺本」の著者や出版社の責任も重大である。嘘のことを書いた本を売っても詐欺にはならない。占いの本と同じで信じる者の判断というのだろうが、また欲に目をくらませている客といえど、こんな「商法」は反消費者的である。
みずほ銀行自体、「今日は大安吉日、一粒万倍日」と店に表示することは問題ないという見解を示した。仏滅や不成就日などの日を表示しないのは、大安や一粒万倍日については積極的に掲示告知して売って欲しいとの客の要望が多いからということだった。係員は「不成就日」を知らず、大安が実は不成就日でもあったり、一粒万倍日が実は仏滅の場合があることも知らなかった。要は、売る店が宣伝上都合の良い日だけを大きく貼り出しているだけなのに、こんな屁理屈をいうのだ。客の要望とは購入者のどれだけによるのかのデータももちろん言えなかった。
宝くじは、みずほ銀行、その再下請の販売業者、売り子までが1枚売ればこれだけ儲かるというシステムの下で、誤解した客であろうと買ってくれさえすれば良いという商法である。結局、宝くじ商法はギャンブル依存症からその予備層、あるいは淡い夢でほとんど当たらないくじを売る準サギ商法である。

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2013年08月23日

賭博に対する雑学の宝箱

 既に書籍紹介しているが、増川宏一氏による「ものと人間の文化史」シリーズの著作は、ゲームやギャンブルの百科事典といえるほど情報が多い。23巻の1,2の将棋、29巻の盤上遊戯、40巻の1~3の賭博、59巻の碁、70巻のさいころなどがある。B5版各冊300頁余、計2500頁以上のこれら著作には古今東西のゲームとギャンブルに関する実に多様な視点と素材がある。
 まず、ゲーム、ギャンブルに関する歴史学は文献紹介もあり、詳しい。社会学、犯罪学なども詳しいが、残念なのはギャンブルをする人の心理学、精神医学がないことである。この点を除き、もし会員ないし読者がゲームや賭博関係の歴史を知ろうと思えば、これら計8冊をお勧めしたい。
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2013年06月18日

ギャンブルNEWSピックup

2013.2.23 日本維新の会「カジノ区域整備推進法案」の議員立法化へ 小沢鋭仁カジノ議員連盟ら(各紙)
   3.21 魂とろかす賭博の快楽 片田珠美精神科医のつぶやき(サンケイ)
   4.21 社説「トト改正法案について」(毎日)
   4.23 カジノ合法化、IR議連総会40人出席し議員立法で秋の臨時国会に。会長自民細田、幹事長岩尾、最高顧問に安倍、麻生、維新の石原、生活の小沢が就任(サンケイ)
   5.18 ロト7で8億円当選3口(4億円くじがキャリーオーバーのため)(各紙)
   5.20 政府観光立国ワーキングチーム IR推進法案の前提を関係省庁に進める、中間とりまとめ
   5.23 競馬脱税事件で有罪判決。しかし、外れ馬券も経費算入と大阪地裁(懲役2ヶ月、執行猶予2年)。検察は5.7億円の無申告として脱税で起訴、裁判所は1.4億円の所得とし、減刑(各紙)
   5.31 上記事件、検察控訴へ
   6.7  日本維新の会「カジノリゾート法案」衆院提出(日経)
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2013年02月27日

大阪市地下鉄パチンコボディ広告差止等請求事件

準備書面(1)はこちら
http://gambl.seesaa.net/article/318351146.html



平成24年(ワ)第11346号 
大阪市地下鉄パチンコボディ広告差止等請求事件
  原告  
  被告  大阪市

準 備 書 面(2)

平成25年2月27日

大阪地方裁判所第11民事部合議2係 御中


                   上記原告ら代理人
                     弁護士  井  上  善  雄

                      同   河  野     豊

                      同   吉  田  哲  也

                      同   中  島  康  之






第1.大阪市パチンコ店広告の違法性―反社会性
1.大阪市の「広告掲出審査基準」に照らし、本件広告の取次ぎが許されるか否かの判断にあたっては、本件広告がパチンコ店の広告である以上、次のとおり、パチンコにまつわる種々の事情をも、十分に考慮されなければならない。
(1)パチンコにまつわる種々の犯罪が多発していること
   パチンコは、様々な犯罪の誘因となっている。パチンコ店で遊ぶための金欲しさの犯行として、窃盗、強盗、横領といった財産犯のほか、殺人事件に発展することもある。また、炎天下のパチンコ店駐車場の自動車内に子どもを放置して、親がパチンコに興じている間に、その子どもを死に至らしめるといった保護責任者遺棄致死事件が多発していることも、公知の事実である。
(2)パチンコ依存症患者が多数存在しており放置されていること
   これら犯罪が多発していることについては、パチンコをして楽しみたいという遊興の欲求からのみ説明することは極めて困難である。なぜなら、彼らが犯している犯罪によって刑事被疑者として、また、刑事被告人として、彼らが支払わされる「対価」は極めて重大なものであって、とうてい一時的な遊興の欲求を満足させることと均衡のとれるものではないからである。
にもかかわらず、彼らが、こうした犯罪に及ぶ理由としては、ギャンブル依存症の発症を疑うべきものである。ギャンブル依存症とは、ギャンブルをやめなければならないということを理性的には理解していても、やめることができない症状を呈する、保険診療の対象ともなる、れっきとした疾患である。その特徴としては、慢性、進行性を有し、いったん発症したときはもはや趣味の範囲でギャンブルを楽しむことができる状態に戻るという意味での完治をみることはなく、適切な治療、あるいは、回復に向けた措置をとらなければ、やがて死にいたるという重篤なものである。医学的には、ほんの些細な楽しみとして始まったギャンブルが、それを繰り返しているうちに、大勝経験により脳内にてβエンドルフィン、ドーパミンが大量分泌され、過剰な興奮、快感を獲得し、さらに、繰り返しているうちに、負けも増え、そして、負け続けてもたまに勝つことによって、勝ちへの期待感がより増強し(間欠強化)、そうした行動が習慣化し、ついには価値観の逆転が起こり、人格的にも「ギャンブラーとしての自己」と「ギャンブルをやめてよりよい人生を送りたいと思っている自己」の二重人格となってしまって、もはや本人の意志のみではいかんともしがたい状態に陥っていくのである。すなわち、行動嗜癖であるギャンブル依存症においても、脳内における器質的変化がみられるのである。
日本におけるギャンブルは、全国に1万店を超す店舗を有し、約20兆円(平成11年度)という売上げをあげるパチンコがその最たるものであり、日本のギャンブル依存症患者のほとんどはパチンコ依存症患者であるところ、パチンコ依存症患者の人数は、ギャンブル依存症治療に長年取り組んできた精神科医によれば、200万人近くにのぼるというのである。これは、パチンコ参加人口が1000万人から2000万人(2003年ないし2011年)として計算すると、そのうち実に5人から10人に一人、すなわち10ないし20%の人がパチンコ依存症を発症しているということになる。そして、これだけの者が、パチンコ依存症の症状によって、経済的、精神的にも破綻し、果ては身体、生命を失っていく。
ところで、パチンコ依存症は、否認の病気であり、自らそれと自覚することが極端に少なく、日本のパチンコ依存症患者のうち、治療や回復に向けた措置を受けている者は、全体の1%にも満たない。我が国では、それらの者に対する社会的なアプローチはほとんどなされていない。また、パチンコ依存症患者は、薬物依存症の場合にみられるのと同様、様々に努力して長期間にわたってパチンコをしないでいられたのに、いったんパチンコをしてしまうと、やはりやめられなくなる(再発)、すなわち、「スリップ」してしまうことがよくある。彼らは、パチンコ店特有の音楽、出玉の音、また、パチンコ店のネオン、そして、パチンコ店の名称を目にしたり耳にしたりするだけで、「スリップ」してしまうのである。
パチンコ依存症がかように恐るべき症状を呈しており、また、かように多数の者の身体、精神を蝕んでいることは、極めて重大な事実である。
(3)ギャンブラーの家族、友人らが酷い目に遭っていること
   パチンコ依存症患者は、もちろんであるが、その周囲にいて、患者本人によかれと思って様々に関わっている家族、友人らは、患者本人の借金を肩代わりしたり、犯罪を犯した本人のために示談金を用意したり、また、自らが本人による犯罪の被害者となったりするなどといった被害を受けている。
   すなわち、ギャンブル依存症の問題は、単に患者本人の問題にとどまらず、その周囲を巻き込み、広範囲に被害を拡散させていく、極めて重大な社会問題であると認識しなければならない。
(4)パチンコそのものの賭博的要素
   パチンコは、賭博罪として摘発された例がみられないが、特殊景品という経済的な交換価値のほとんどないものを最終的にはあらかじめ用意された景品交換所で換金することが予定されているものであって、賭博的要素の極めて強いものである。また、パチンコが「賭博」であるとの認識は、社会通念として存在しており、刑法がその「賭博」を犯罪として処罰の対象としていることも、極めて重大な事情である。
(5)以上のような事情を考慮するならば、本件広告は、「賭博」あるいは賭博的要素の強い産業のものであって、「賭博」を憎む「善良な習慣」や「健全な社会秩序」を「損なう」ものであって、また、ギャンブル依存症を患う鉄道利用者にとっては、本件ラッピング車両には「スリップ」の危険があるという意味で「不利益をもたらす」ものであり、被告の「審査基準」からしても、本来取り次ぎを許すべきではなかったものである。


第2.地下鉄ボディ広告についてマルハン広告のみ継続することの問題点と違法性
1.事実関係の整理
(1)市交通局によると、従来、パチンコ店広告については広告の社会規制の必要から一律承認していなかったが、平成7年10月1日に規制を緩和した。健全娯楽のパチンコ店(車内放送を除く)は一応許可枠を広げて、広告内容を規制していた。そして、平成17年10月1日改正などの経過を得ていた。平成19年1月26日、(株)大広メディアックスという一企業の申請により(乙4号証)、(株)マルハンの10輌全面外装広告(ボディ広告)の設置を一週間後の2月2日に「許可」している(乙5号証)。
(2)しかし、かかるパチンコ・スロット全車輌ボディ広告について、市民から批判の声も出た。
   実は、市交通局の車輌内部、外部の商業広告については、市民乗客から批判が多く、パチ・スロやギャンブル広告は反教育的、反消費者的などの非難も絶えなかったところ、大阪市は不十分ながらも平成19年4月1日の広告審査基準の8次改定につづき、平成23年4月1日に9次改定をしている。
(3)そして、地下鉄の全面全車輌ボディ広告は、事実上、マルハンの1例だけであることを踏まえて、市交通局は平成22年6月16日付で地下鉄ボディラッピング広告の取扱要領を変え、今後の車輌ボディ広告においては、パチンコ業など風俗営業関係の業種は掲出を承認しない(乙3号証11条)こととした。
   これにより、本来、マルハンのボディ広告も廃止されるべきであった。大阪市交通局は、マルハンの広告承認は平成19年2月2日に平成19年3月1日から1年間とし、ただし、1年内でも当局の業務上取り消すことがあるとの特別条件付で許可しているのに、平成20年、21年、22年、23年、24年と一年ごと契約してきた。これは、平成22年6月16日以降も今後共平成22年6月16日の市の方針変更前のマルハンを広告主とする大広メディアックスと新契約を続けるというものであろう。
(4)このマルハン広告の契約の理由が失当であることは、原告は準備書面(1)10頁でも論じた。反公共的で、「契約」であれ「許可」であれ、継続が濫用である旨述べているところである。

2.被告大阪市交通局の憲法14条、地方自治法10条2項違反
ただ、この大阪市交通局のマルハン広告車輌のみの契約は、次の点でも違法である。
大阪市は、地方公共自治体として特に公共目的上の必要がないのに大阪市民や企業を差別的に取り扱うことは憲法14条を持ち出すまでもなく許されない。
大阪市交通局は、平成22年6月16日付の取扱要領の変更でパチンコ業などの風俗営業の広告を承認しないと定めたのであるから、その定めた公共目的(風俗営業広告を車輌外装に全面広告することで、地下鉄の利用市民のみならず沿線住民に対しても自ら広告媒体として屋外広告の主体となることへの抑制が必要としたものである)から差別的に取り扱うことは許されない。取扱の変更は、マルハンのパチ・スロ広告はよいが、他の会社のパチ・スロ広告ないし他の風俗営業(カラオケから多種多様)はダメであるとの判断はあろう筈がない。
まさに、広告主のマルハンだけが今後とも自らが止めるといわない限り5年でも10年でも続けられるように取り扱うというのが、被告の主張である。そして、他の住民、企業がマルハンと同じく広告料を支払っても承認しないと被告は自認するところである。
このような差別取扱いは憲法14条だけでなく、地方自治法10条に定める住民が大阪市の広告の機会を等しく受ける権利を侵害し、違法である。

3.被告大阪市交通局の差別取引と独占禁止法上の公正取引違反
大阪市交通局も広告媒体として広く市民・事業者に広告の機会を有料で提供して収益を得ている以上、事業者としていわゆる独占禁止法の規制を受ける。
   大阪市交通局は、マルハンに対しては今後とも大阪市民の最も多くの人が利用する御堂筋線の車輌全面ボディ広告を続けうる一方、他の業者には正当な理由がないのに拒絶するとしている。
これは、一度許可後、市交通局の方針変更によりマルハンのみ既得権的広告主として許可し続けるというのがその言い分であるが、実は事情の変更により承認取消できることは「契約」「許可」において条件化していた。この点をおくとしても被告の主張は、一度広告を承認したら事情が変わっても半永久的に承認し続けなければならないという詭弁である。それ故に差別的取引を続ける正当事由にはならない。
大阪市交通局は、独禁法2条の不公正な取引方法として定型とされる9項6号イの「不当に他の事業者を差別的に取り扱うこと」に該当し、違法である。

第3.被告準備書面(2)の広告中止の主張について
1.本書面は、従前の主張から一転して広告中止になることを述べている。
  その表向きの主張は、平成25年2月1日付で(株)マルハンの取次店である(株)大広メディアックスを通じて大阪市交通局長に2月28日を中止期日とする届出がなされた(乙28号証)という。
  しかし、乙28号証は、交通局と深い関わりのある大広メディアックスの届出の形をとり、内々大阪市交通局とマルハンを含む3者が協議の上、中止したものであろう。
  これは、従前の被告大阪市交通局の体面主張を維持したものであろうが、本来は、交通局の自主的な判断をより明確にすることが、市民の公共信託を受け公有財産を預かる者として適切であり、他者の判断の結果の形をとることは不適切であったといえる。

2.そして、その広告が継続される理由は不可解である。2月28日をもって中止するのがマルハンと取次店大広メディアックスの意向ならば、大阪市交通局が3月1日以後も広告を続ける理由は全くない。広告料は、規約、規程、契約により3月1日以降受領できなくなるかどうかは別途解釈を要するかも知れないが、中止意思の広告主や取次店の届出にかかわらず、3月1日以降広告を継続する列車を運行させることは次の点で違法である。
  第1に、広告主の意思に反する広告の継続はすべきでない。広告主が中止を届け出るのは様々な動機、理由がある。いずれにせよ、明示の意思に反する広告は、中止が可能ならば不当で広告料も得られない。3月1日以降は広告しても広告料の支払い不要という意味であるなら、なおさら不適法となる。
  第2に、平成24年3月15日から36日間、車輌検査のため運休していて、大阪市交通局が広告取扱規程14条3号(乙29号証)に基づき期間延長処理を要すると判断されるものという。しかし、14条本文と(3)は「局の業務上の都合により長期間営業運転を中止したとき」「広告の掲出ができなかった期間に相当する日数に限り掲出期間を延長することができる」との規程であり、本件は、マルハン、大広メディアックスの都合で2月28日での中止を申し出たものである。それにもかかわらず、わざわざ局長が掲出期間を一方的に延長するとの措置は、解釈、運用上も違法である。
  被告が、局の業務上都合で、マルハン側が本来希望しない広告期間を先に義務付けることは濫用である。むしろ、元々の本件広告期間は、本来2月28日までであって、合意もなく延長できない。
  第3に、マルハン側も本来想定されている車輌検査のあったことは知っていて契約し、本件期間延長を求めず2月28日で中止を求めたのであるから、市交通局が積極的に延長を求めることはできない。もし、広告掲出期間中の合意があっても、規程12条があり、(4)の使用承認の取消を申し出たときであり、単純に取り消せばよい。マルハンも大広メディアックス側も広告料金を先払いしていれば返還を求めないし、また求め得ないであろう。
3.したがって、3月1日以降運行に供せず、規程15条により、本件広告車輌使用者(マルハン、大広メディアックス)の負担においてすみやかに広告を撤去すべきであり、主張のように4月5日まで広告掲出をすることは違法である。

4.さらに、4月6日以降7~10日程度の広告撤去期間がいるとか、他の車輌の定期検査などの諸事情を考慮して5月初旬に広告を撤去するので、その間は本件ボディ広告車輌が走行するというが、全くもって不当である。
  そもそも、一年ごとの契約からすれば2月中にもマルハン広告車輌の継続中止があることは想定されているところであり、広告撤去の最小限の必要時間は、マルハン、大広メディアックス側の広告料の納入期間で、2月中にもボディラッピング広告の撤去作業に入ればよい。
  また、マルハン、大広メディアックス側の意向で撤去するのに、有料広告期間が過ぎた3月1日以降5月上旬まで、①マルハン側の意思に反したボディ広告をすること、②広告料をとらないまま、撤去作業を遅らせてボディ広告車輌を地下鉄で走行させることは、市に2ヶ月分以上の広告料収入月200万円として400万円以上の損害を市に与えるものである。
  このような事態が生ずると、市民から別途、市に損害を与えたという住民監査請求すら想定される。

5.よって、少なくとも3月1日以降直ちにボディラッピング広告の撤去作業に入ることが正当である。広告主が中止を求めている広告を2ヶ月以上継続することは違法であり、直ちに差し止めを求める。

6.なお、原告らは被告が3月5日の公判準備期日において、厳正に3月以降中止の方針を示されるならば、大阪市は良識により市民の期待に応えたものであると評価し、訴えを取り下げる予定である。
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2013年02月03日

大阪市地下鉄パチンコボディ広告差止等請求事件(準備書面(1))

平成24年(ワ)第11346号 
大阪市地下鉄パチンコボディ広告差止等請求事件
  原告  ■■■■ 外
  被告  大阪市

準 備 書 面(1)

平成25年1月9日

大阪地方裁判所第11民事部合議2係 御中


                   上記原告ら代理人
                     弁護士  井  上  善  雄

                      同   河  野     豊

                      同   吉  田  哲  也

                      同   中  島  康  之






第1.地下鉄の電車ボディ広告が屋外広告物法、屋外広告物条例に違反すること
1.屋外広告物法は、良好な景観の形成、風致の維持、公衆への危険を防止するために制定された。屋外広告物とはいわゆる広告塔、看板の外、電柱、アドバルーン、貼り紙、立て看板はもとより、今では電車やバス、車の車体利用の広告物をも対象とすることができる。
  したがって、本件パチンコボディ広告も条例により規制対象となることが認められている。具体的には、その地域の実情を考慮した都道府県条例、政令市・中核市では市条例に委ねられているところから、その条例と施行規則や首長の定める基準の施行、さらには行政指導によりその目的の実現が図られている。
  さて、大阪の地域では、府条例自身は直接電車・バスの車体広告を規制していないが、大阪市や近時平成24年4月1日より中核市となった豊中市ではこれらも規制対象としている。大阪市では、大阪市屋外広告物条例2条の2で「工作物の壁面を利用するもの」として電車・バスの外壁面も市長の許可対象としているし、豊中市では、豊中市屋外広告物条例9条で広告物として車両(同施行規則3条第2項で電車、路線バス、広告宣伝車)を明記している。

2.屋外広告物の規制は、基本的に①許可区域、②禁止区域、③表示方法の制限等、④危害の防止等を定める。許可区域では所定の許可申請を定め、所定の条件(期間、内容、形体等)の下に審査して許可する。また、一種住専区域や風致地区等の地域要件、道路、道路柵、公共物などでの広告物の設置禁止を定めたり、表示方法の制限をする。そして、一定の違反には罰則まで定めている。その外、許可申請に関しては登録業者制により業者監督も行う。
  これらの規制は広告規制への社会要求度の高まりもあって、後年制定のものほどより厳しくなっている。

3.大阪市交通局の地下鉄ボディ広告は、大阪市自らが条例に定める行政目的を果たす義務があり(1条の2)、広告業者、広告主、施設管理者、市民にも協力責務を求める(1条の2~4)旨明記し、地域特性、道路、鉄道、軌道等での広告物表示の禁止や道、橋、その他での広告物掲出を禁止しており(4条)、「形状、面積、色彩、意匠、その他の表示の方法についても、良好な景観、もしくは風致を害するおそれのある広告物」を禁じている(5条)こと、さらに広告物についてより良好な景観の形成への基本計画や基準に基づく指導、助言、勧告を行うことができるとしていることからして、自らにはより厳しい法・条例の遵守と法・条例目的への貢献が求められている。
  これらの点を考えると、大阪市地下鉄は例えば御堂筋線でいうと、地上を走る中津以北の西中島南方、新大阪、東三国、江坂付近までは大阪市条例により屋外広告物としての禁止条件に反しないこと、また許可条件に合致するとしても具体的許可申請をなし、許可対象になるにしても適法な許可を得て、許可に伴う負担や責務を果たしていなければならないし、積極的貢献が求められる。
  さらに、御堂筋線は、大阪市のほか、吹田市の江坂、桃山台、豊中市の緑地公園、千里中央と3市を通過し、結局大阪府、大阪市、豊中市の全ての条例目的への貢献と許可条件を満たすものでなければならない。
  なお、大阪市地下鉄御堂筋線のマルハンのボディ広告は、現在上記の3市のみに関係するが、阪急と相互乗り入れをする堺筋線関係では大阪市地下鉄のボディ広告は、大阪市、大阪府の吹田市、茨木市、高槻市で条例基準と許可条件を満たしていなければならないことになる。
  また、中央線では、大阪市、東大阪市や生駒市、奈良市にも関係するところでは、それぞれ屋外広告物の条例基準と許可条件を満たしていなければならない。

4.大阪市地下鉄は、性格上ほとんど地下通行であり、かつてはボディ広告が限られた状況であるためか、その広告物が良好な景観、風致にかかわるという意識が薄かった。そこに近時、広告物業者の営業拡大、営利主義と電車やバスのボディ広告の媒体となり、ただ広告収入が入れば良いという安易さが加わって、ついにパチンコ、スロット(併せてパチ・スロという)という実質脱法賭博のパチ・スロ会社の、しかも全車輌(10輌)全面広告まで導入させたのである。この広告企業は(株)大広メディアックスともいわれるが、市交通局と広告業者との癒着もいわれる。
  かくて、「良好な景観への配慮」どころか、ギャンブル広告で「風致の維持」に反するもの、未成年、青少年の参加を法が禁止している一方で、無差別に参加を誘惑することで公衆への危険を招く広告が、公共自治体の大阪市の交通局によって実施されることになったのである。
  これは別に法と条例の適合条件や手続への個別違反を指摘するまでもなく、違法というべきである。

5.近年、大阪市交通局の地下鉄はいわゆる車内広告、さらにはそれにも飽きたらず、車の窓ガラスから外に向けた広告を氾濫させ、JRや民鉄を凌駕する広告を乗客に強いている。その中にはギャンブル広告もあり、年々節度をわきまえず、一部には不実、不当広告まである。
  そして、ついに専ら車外への広告物となるボディ広告を普及拡大させた。これは乗客と市民感覚をマヒさせるやり方である。
地下鉄は完全な各駅停車であり、駅で列車を待つ乗客は、駅員の案内で入駅してくる列車を全て注意して見守るよう求められる。そして、完全に停車するまでの間、いやが上にも視させるという効果を狙っているのがボディ広告である。
  この点、外の民鉄は急行、快速など同じ列車が多くの駅を単に通過し、駅内の客には外装広告の判別までは不可能な運行をしているのとは異なっている。広告業者も広告主マルハンもこの効果により地下鉄ボディ広告を行うのである。ここには大阪市交通局が一般の私営企業以上に広告営利主義しかない。この点でも地下鉄のボディ営利広告は、それ自体が反公共的で、市民乗客への「視たくない自由」を奪うものである。

6.次に、屋外広告物法、屋外広告物条例の規制方法からしても、地下鉄ボディ広告は反社会的かつ違法である。
  法や条例は鉄道路線に面する一定の区域に屋外広告物を禁止している。これは乗客を含む人々の眼の景観を屋外広告物から守るためである。鉄道線路沿いは、営利、広告本位にすれば屋外広告物の格好の場となるが、もしそうなると鉄道の乗客は屋外広告物の壁の中を走らされることになりかねない。そこで鉄道沿い、軌道沿いには原則的に禁止規定が定められている。線路沿いの広告物は限定され、市民・乗客は車内から窓外の沿線の風景も不快な思いなく視られるよう保護される。
  このように鉄道、軌道と乗客ら保護のために沿線で禁止されている広告が、逆に鉄道のボディ広告の側が沿線住民や乗客らに、広告物を視ることまで強いるということは、得手勝手が過ぎると言わなければならない。
  地下鉄を含む鉄軌道業者は、屋外広告物法と条例で自らも守られている立場を考えるなら、逆に同様の屋外広告物は禁止されてしかるべきである。
  この点、大阪市地下鉄が地上階で走りつつ、沿線に広告効果を与えるボディ広告車、屋外広告物列車を走らせることは違法である。

第2.本件マルハンボディ広告の反社会性、違法性
1.パチ・スロ店広告の解禁の反社会性
  マルハンはパチ・スロ店で、パチンコやスロットマシンの設備を設けて客に射倖心をそそる遊技をさせる営業(風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律、以下風営法という)の対象の風俗営業である。そして、その営業は風営法22条で18才未満の者を営業所に客として立ち入らせることが禁じられているのに、現実はその者も立ち入っていることは公知である。また23条で客への賞品を買い取らせたりしてはいけないところ「三店方式」という脱法手法で換金させて賭博を行っている。
  従って、これらの営業は違法賭博ないし脱法賭博であって健全な営業ではない。
  大阪市交通局は、自らかつて規制していたパチンコ店広告の禁止を「健全娯楽のパチンコ店(車内放送を除く)」に限り、平成7年10月1日規制を解除したというが(乙1号証23頁)、現在のパチンコ店は健全娯楽とはいえない。
  「健全娯楽のパチンコ店」とは「三店方式」など脱法賭博方式をとらず、風紀を守り、もちろん通常人の視聴覚にも悪影響をもたらさないことなど、環境的にも配慮されたものが必要で、いわば昔の静かな子供用の遊べるパチンコ店レベルをいうべきである。
  現在のパチンコ・スロット機は、未成年を含むAKB48らの少女らが画面で大きく身体を露出させてゲームを誘うものや、暴力シーンの継続するものも多く、すさまじい騒音と汚染大気の環境下にあり、健全娯楽などというには程遠い状況にある。
  よって、大阪市の自ら定めた健全娯楽としてのパチンコ規制解除の要件に該当しない。

2.全車輌外装全面広告列車の異常性と違法性
  本来、大阪市の地下鉄は、公共輸送の使命を第一とし、大阪市民の税金と利用者の運賃で運営する鉄道である。いわゆる広告物営業を目的とする営業車ではない。してみると、列車全体外面を特定企業に売り渡したごとき契約をすることはできない。ところが、本件のマルハンボディ広告車輌は、この外面全てを売り渡したがごときものになっている。これは市営交通としての目的使命を大きく逸脱したものである。また、これは市の公共目的に違反する契約である。
  大阪市は、このような違反車輌を市内に走行させることも許されない。これは地方自治体たる大阪市が「地方自治体の健全な発達」「公共の福祉の増進」に努める責務を有するところ、これに違反する行為は無効とする(地方自治法1条、1条の2、2条14項、17項)ことからもいえる。
  仮に広告収入が地下鉄経営に一定の貢献をするとしても、その内容、方法、程度には自ら限度があり、景観や風致を害することは許されず、実質ギャンブルといわれる風俗営業のパチ・スロ会社の広告をボディ広告までして行うことは、公共使命の鉄道としての許容限度を著しく逸脱している。
  被告の答弁書や乙3号証の要領の11条では、パチンコ営業等はボディ広告の掲出を承認しないと決めたというが、このことは市民・乗客の批判にようやく自覚し始めたということである。しかし、今なおマルハンのボディ広告のみ既得権者のように独占許可し続けていることは全く違法である。
  大阪市営の地下鉄がマルハンのパチ・スロを広告することで、マルハンのパチ・スロが反教育的であるにもかかわらず、良きギャンブル・良き遊技として大阪市も承認し、さらには推薦しているとの誤解も与える。そのような誤解を含むイメージを得ることがパチ・スロのマルハン広告の狙いである。

3.パチ・スロ営業により大阪市は損害を受けていること
  そもそもパチ・スロは、パチ・スロ依存症ともいわれる多数の病人を生み出している。客数は全国で2000万人ともいわれ、そのうち少なくとも100万人~200万人のパチ・スロ依存症がいる。この依存症の客もマルハンは客としている。そのことだけの被害をみても大阪市が広告対象にすることは許されない。
  大阪市はそのパチ・スロ依存症ら病人のために医療費など対応費を負担している。大阪市から給付される生活保護費までがパチ・スロに浪費されて困っていることは、大阪市のケースワーカーら福祉行政部門も熟知しているところである。
  その大阪市が日本一で2兆円以上のギャンブル売上のマルハンの宣伝広告車輌を、大阪の第一のメイン地下鉄御堂筋線で走行させることは、茶番を越して公序良俗に反し、大阪市の行政目的に反する反公共行為であり許されない。

4.パチ・スロ営業の賭博性と犯罪性
  パチ・スロは建前上は遊技業であるが、単に遊び、遊技の場でなく賭けで金品を獲得するもので賭博性を有する。例外的に少額の景品物は許されるという考えもあったが、今では客が得たパチンコでは玉、スロットではメダルに対し、店が交付する「特殊景品」を店の横にある交換所で換金し、特殊景品はパチ・スロ店が買い戻すといういわゆる「三店方式」を行っているところから、事実上金を賭けた完全な賭博となっている。
  現在のところ、最高裁判決までこの賭博犯罪の成否が争われたケースはなく、いわゆるグレーゾーンのまま、警察とパチ・スロ機メーカー、パチ・スロ店の癒着により「三店方式」の賭博が続いているのである。
  パチ・スロ業界は、かつてはヤクザと癒着していたが、今は警察と癒着して抱え込む形で続けられている。例えば警察庁長官、警視総監,県警本部長らが、パチ・スロの検定機関である警察庁の外郭団体、一般財団法人保安通信協会の会長や理事として長年天下りする状況で、犯罪を真に取り締まっていないだけである。現実の警察の取締りは、警察が自らのトップの天下りから各警察署の生活安全課職員の仕事と再就職先までを失わない程度に適当にしていると言われて久しい。
  パチ・スロ店の出店は地域制限もあり、教育施設や病院等の一定範囲では規制され、18才以下は客としての入店そのものが禁止されている。しかし、現実には18才未満の者の入店が横行している。パチ・スロ店の異常な環境は入ればすぐわかるが聴力を害する程の騒音下で、パチンコ玉、メダル獲得手段での金を儲ける賭博場そのものである。このため、良好な住環境や教育環境を求める市民から、風紀と環境を害するとして当該地域への進出反対の声が絶えない。

5.パチ・スロの弊害・被害
  パチ・スロの弊害は、賭博そのものによる勤労意欲の喪失、教育への弊害、精神発達障害と病的賭博、その他の害だけでない。医学的にも解明されるパチ・スロによって生み出された依存症患者とその予備層は、その資金のため借金、詐欺、窃盗、さらにはその賭博の失敗などから自殺、無理心中、放火、殺人に至るまで犯罪を起こしている。その被害者は、家族(子供がパチ・スロ店駐車場の車内で日射病で死亡した例も少なくない)から、パチ・スロ店への攻撃などで通行人などパチ・スロに関係のない人にも及んでいる(例えば、2009年7月5日大阪市此花区パチンコ店入り口での放火事件。5名死亡、19名重軽傷)。パチ・スロがこのような弊害を撒きつつも、ギャンブルという人を病人や夢中にさせる行為でパチ・スロ店は20兆円を売り上げている。その中でも一社で年間2兆791億円の売上、521億円の利益を上げているのが、業界トップの(株)マルハンである。
  大阪市交通局が、こんなパチ・スロ業者であるマルハンの独占広告に加担することは犯罪的ですらある。

6.本件パチ・スロ広告の反社会性、反教育性、反風紀性
  パチ・スロの賭博の反社会性、反教育性からしても、パチ・スロ店が生み出すパチ・スロ依存症からしても、パチ・スロの店舗や営業の景観公害から風紀(建物、ネオンからそこに集まる客層、マナーまで)を乱す状況からしても、本件のパチ・スロ店の名称広告であれ、自らを「パチンコエンタテイメント」と自画自賛する広告であれ、「マルハンなんば店」を個別店舗案内する広告であれ、そのボディ広告は要するに、マルハンのパチ・スロ営業を「健全な娯楽」と欺き、市民や乗客を無差別に自らのパチ・スロ店へ来店するよう誘うものである。
  本件ボディ広告には青少年を保護するに十分な配慮はない。大阪市は自らの基準により、パチンコ広告では「18才未満の方は入場をお断りします」との表示をさせることにしているにもかかわらず、その記載は事実上ほとんど見えない申し訳的な小さな記載でしかない。そして、小さな表示はあってもパチ・スロ店での18才未満の客としての入場も十分制限されていない。

7.マルハンのボディ広告はいつでもやめられるし、やめるべきである。
  答弁書によると被告は、マルハンのボディ広告は乙3号証にある要領以前に始めており、平成19年1月26日の申請(乙4号証)で同年2月2日に岡本勉交通局長が許可し(乙5号証)、以降その継続をしているので乙3号証の要領は適用とならず、続けることが正当であるという。
  しかし、この主張はパチ・スロ店マルハンの広告のみを他の店とは異なり既得権者として独占許可し続けるという大きな誤りを犯していることになる。
  そもそも、乙4号証の申請によれば、「期間 平成19年3月1日~」とあるだけで、設置条件は全て市交通局の指示条件に従うとある。
  そして、平成19年2月2日付の許可書(乙5号証)は「平成19年3月1日から1年間とする。ただし、当局業務上の支障その他の事情により、設置許可期間にもかかわらず、許可を取り消すことがある。」と明記する。
  だとすれば、自動継続的に毎年設置許可することは市交通局として義務化されてもいない。そして、自らが乙3号証の要領を定めるまでしているように事情が大きく変わっている。それによれば「業務上支障、その他の事情」で許可期間内でさえ取り消せるのに、マルハンだけを特別扱いにして優遇し続けることは、不公平さも加えて反公共的である。
  平成22年6月26日以降の許可継続をしている担当者局長は、岡本局長よりもっと(株)大広メディアックスないしマルハンと癒着し、要領違反の許可をして濫用していることになる。

第3.人格権侵害
1.人格権の侵害について、最高裁は、「一般的には、各人の価値観が多様化し、精神的な摩擦が様々な形で現れている現代社会においては、各人が自己の行動について他者の社会的活動との調和を十分に図る必要があるから、人が社会生活において他者から内心の静穏な感情を害され精神的苦痛を受けることがあっても、一定の程度では甘受すべきものというべきではあるが、社会通念上その限度を超えるものについては人格的な利益として法的に保護すべき場合があり、それに対する侵害があれば、その侵害の態様、程度如何によっては、不法行為が成立する余地があるものと介すべきである。」と判示する(平成3年4月26日最高裁判所第2小法廷判決・民集45巻4号653頁)。
  そして、上述したように、本件ボディ広告が、市の条例の趣旨に反し、また地下鉄の公共性に反し、反社会性・反教育性・反風紀性を帯びるものであることからすれば、本件ボディ広告は、社会通念上その限度を超えるものであり「人がギャンブル広告を視たり、パチンコ車輌に乗ることを無理強いされない」という人格権を侵害しており、不法行為に該当する。

2.また、昭和63年12月20日最高裁判所第3小法廷判決(集民155号377頁)の事案では、商業宣伝放送の差止請求は認められなかったが、それは、以下の理由によるものであった。すなわち、同商業宣伝放送は、「商業宣伝放送としては比較的控え目なもの」であること「本件放送は、一部の限られた乗客に対するものであるが、降車駅案内という乗客にとり必要で有益な放送としての面をも有するのであって、いずれも一般乗客に対しそれ程の嫌悪感を与えるものとは思われない」ことが重視されたのである(昭和58年5月31日大阪高裁判決・判例タイムズ504号105頁)。
しかるに、本件ボディ広告においては、車両の全面を使った広告であり、そのボディ広告は駅に進入してくる車輌を自らの安全確保のために視るように構内放送で案内され視ざるを得ないものであり、「控えめ」とは決して評価できないものであるのみならず、乗客らにとってもパチ・スロの広告は、「必要な」情報とは到底いえないものである。「必要な」情報であるどころか、車輌に乗車することについて有害な情報である。
したがって、本件において、本件ボディ広告は原告らの人格権を侵害している。
ところで、上記最高裁判決において、伊藤正己裁判官は、次のような補足意見を述べている。
「人は、法律の規定をまつまでもなく、日常生活において見たくないものを見ず、聞きたくないものを聞かない自由を本来有しているとされる。私は、個人が他者から自己の欲しない刺戟によって心の静穏を乱されない利益を有しており、これを広い意味でのプライバシーと呼ぶことができると考えており、聞きたくない音を聞かされることは、このような心の静穏を侵害することになると考えている。このような利益が法的に保護を受ける利益としてどの程度に強固なものかについては問題があるとしても、現代社会においてそれを法的な利益とみることを妨げないのである。」
「問題は、本件商業宣伝放送が公共の場所ではあるが、地下鉄の車内という乗客にとって目的地に到達するため利用せざるをえない交通機関のなかでの放送であり、これを聞くことを事実上強制されるという事実をどう考えるかという点である。これが「とらわれの聞き手」といわれる問題である。人が公共の交通機関を利用するときは、もとよりその意思に基づいて利用するのであり、また他の手段によって目的地に到着することも不可能ではないから、選択の自由が全くないわけではない。しかし、人は通常その交通機関を利用せざるをえないのであり、その利用をしている間に利用をやめるときには目的を達成することができない。比喩的表現であるが、その者は「とらわれ」た状態におかれているといえよう。そこで車内放送が行われるときには、その音は必然的に乗客の耳に達するのであり、それがある乗客にとって聞きたくない音量や内容のものであってもこれから逃れることができず、せいぜいその者にとってできるだけそれを聞かないよう努力することが残されているにすぎない。したがって、実際上このような「とらわれの聞き手」にとってその音を聞くことが強制されていると考えられよう。およそ表現の自由が憲法上強い保障を受けるのは、受け手が多くの表現のうちから自由に特定の表現を選んで受けとることができ、また受けとりたくない表現を自己の意思で受けとることを拒むことのできる場を前提としていると考えられる(「思想表現の自由市場」といわれるのがそれである。)。したがって、特定の表現のみが受け手に強制的に伝達されるところでは表現の自由の保障は典型的に機能するものではなく、その制約をうける範囲が大きいとされざるをえない。本件商業宣伝放送が憲法上の表現の自由の保障をうけるものであるかどうかには問題があるが、これを経済的自由の行使とみるときはもとより、表現の自由の行使とみるとしても、右にみたように、一般の表現行為と異なる評価をうけると解される。もとより、このように解するからといって、「とらわれの聞き手」への情報の伝達がプライバシーの利益に劣るものとして直ちに違法な侵害行為と判断されるものではない。しかし、このような聞き手の状況はプライバシーの利益との調整を考える場合に考慮される一つの要素となるというべきであり、本件の放送が一般の公共の場所においてプライバシーの侵害に当たらないとしても、それが本件のような「とらわれの聞き手」に対しては異なる評価をうけることもありうるのである。」
「試験放送として実施された第一審判決添付別紙(一)のような内容であるとすると違法と評価されるおそれがないとはいえないが、その後被上告人はその内容を控え目なものとし、駅周辺の企業を広告主とし、同別紙(四)の示す基準にのっとり同別紙(五)のような内容で実施するに至っているというのであり、この程度の内容の商業宣伝放送であれば、上告人が右に述べた「とらわれの聞き手」であること、さらに、本件地下鉄が地方公営企業であることを考慮にいれるとしても、なお上告人にとって受忍の範囲をこえたプライバシーの侵害であるということはできず、その論旨は採用することはできないというべきである。」

  上記最高裁判決の事案と異なり、本件においては、パチ・スロ広告をできるだけ視ないようにする努力は不可能である。地下鉄がホームに入ってくる際には、安全確認のために車輌を確認しなければならない。また、その車輌に乗り合わせた場合には、車輌の中でもパチ・スロ広告を見せつけられているのである。この点において、上記最高裁判決の事案よりも権利侵害の程度・態様は甚だしい。
  さらには、人格権を侵害している対象は、景観や風致を害するだけでなく、違法賭博営業をする店の案内広告、風俗営業として18歳未満の青少年が入場することができないパチ・スロの広告物なのであり、「内容を控え目なものとし、駅周辺の企業を広告主とし」たような上記最高裁判決の事案よりも権利侵害の程度・態様が悪質である。

3. したがって、本件パチンコボディ広告は、人格権を侵害し違法性を有する。

第4.まとめ
  これらの法違反を含む反社会性、反教育性、反風紀性をもつ広告を、乗客や市民に強いる本件広告は、屋外広告物法、屋外広告物条例に違反し、また市自らの規準にも濫用した違法なものであり、それにより原告ら市民、乗客の「目の平穏さ」「広告を強いられない自由」を侵害する不法行為である。
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大阪市地下鉄パチンコボディ広告差止等請求事件(訴状)

訴     状

平成24年10月19日
大阪地方裁判所  御中

                原告ら訴訟代理人
弁護士  井  上  善  雄

                    同    河  野     豊

                    同    吉  田  哲  也

                    同    中  島  康  之




当事者の表示  別紙当事者目録記載のとおり


大阪市地下鉄パチンコボディ広告差止等請求事件
訴訟物の価額  金1,850,000円
貼用印紙額     金15,000円


請  求  の  趣  旨
1 被告大阪市は、大阪市営地下鉄においてパチンコボディ広告をしてはならない。
2 被告大阪市は、各原告に対し、金5万円を支払え。
3 訴訟費用は被告の負担とする。
との判決並びに1,2項につき仮執行の宣言を求める。

請  求  の  原  因
第1.当事者
1.被告大阪市(大阪市交通局)は、大阪市営地下鉄御堂筋線において、パチンコ会社株式会社マルハンの外装ボディ広告した車輌(以下、パチンコ車輌という)を運行させている。
2.原告らは、被告大阪市の市営地下鉄の利用旅客である。後記のとおり、このパチンコ車輌に乗らなければ一台遅れる他の車輌に乗らねばならないなど、不便を生じさせられただけでなく、進入するパチンコ車輌を無理矢理に見せつけられる状況となって被害を受けている者である。

第2.マルハンの全車輌ボディ広告車輌運行の違法性と差止の必要性
1.市営地下鉄運行の公共責任
市営地下鉄は、大阪市住民をはじめ、大阪市域にて生活、勤務、業務を行い、また観光等のために必要な鉄道線であり、その運行は何人にも迷惑を掛けず受け入れられるものでなければならない。
  鉄道は民営鉄道においても公共性が高く、その鉄道の広告等もそもそも節度があるものでなくてはならない。特に、市営地下鉄は経営主体も公共自治体の大阪市で、市民の利益や人権を守り、公共の福祉を増進すべき責任がある。また、料金を支払う利用者市民への適正な輸送サービスを行う電車であり、駅構内から車輌そのもの、また車輌内広告まで、それを視る乗客に不必要な強制や、それを利用する者に強い不快感を与えるものであってはならない。
2.本件広告の強要性
広告には視聴覚に訴える様々なものがあるが、その営利広告には特に無差別的に視ることや聴くことを強制するものは許されない。
  この点、パチンコ会社のマルハンボディ広告の車輌は、それが接近することで駅の客にその車輌を視ることを強制する。駅で待機する客は、駅員らの案内するとおり進入してくるその車輌を視ることを余儀なくされる。
  もとより、市営地下鉄にはボディ広告のない車輌やマルハン広告以外の車輌もあるが、乗客、市民は駅に入ってくる車輌の外装ボディ広告の有無や内容があらかじめ判る訳でもなく、駅にいてこれから乗ろうという者は嫌でも視ることになる。そして乗車する場合はパチンコ広告のあるドアから乗ることを余儀なくされる。そして、パチンコ車輌に乗ることはマルハンのパチンコ仲間にされてしまう。
客が、このパチンコ車輌に対し、不快または拒絶したいと思えば少しでもその車輌に気付けば視線を敢えてそらし、そして敢えてその車輌に乗らないという選択をせざるを得ない。しかし、その車輌の進入を視ないということは危険性がある。
  この点で、このようなパチンコの一企業の営業広告を全10輌のボディに外装して人に視させ、乗らせるのは、大阪市交通局として許されない強要行為である。
3.車輌広告の不法性(反倫理性)
本来、車輌全体を特定企業の広告列車にすることは、大阪市の車輌の広告として違法である。特に本件はギャンブルで日本一に成長したパチンコ会社の広告であり、市が定める広告倫理基準で「倫理及び品位を重んじ、善良な習慣を損なうもの」は禁じられていることからしても違法である。まして、乗客ともなる青少年がギャンブルや風俗営業のパチンコ会社の広告で参加を誘われることは、18歳未満の参加を法令で制限していることからしても健全な社会秩序を損なうものである。
  パチンコ広告については本来、風俗営業広告として地下鉄など公営施設への広告自体不適切とされていた。それが地下鉄車体ボディ広告でマルハンのパチンコ業広告をすることは、市の審査基準からいって著しい逸脱である。市の広告基準では、別に大型媒体及び大量掲出となる媒体でのパチンコ業広告が禁じられていることからしても許されない。
  すなわち、被告大阪市は、所有管理するものにパチンコ業の大々的な広告媒体となるものを禁ずる主旨からしても、地下鉄車体ボディ広告は違法である。

  以上により、車輌にマルハンのボディ広告を行うことは地下鉄に乗る者に無差別にパチンコというギャンブル広告を視ることを強制し、ギャンブル列車に乗りたくない者は乗り過ごすしかないということを強いる不法行為である。すなわちそれは、人がギャンブル広告を視たり、パチンコ車輌に乗ることを無理強いされないという人格権の侵害である。
  よって差し止めを求める。

4.次に、本件の全車輌広告は旅客の安全快適な運送を契約内容とする個々の乗客との契約違反でもある。
  乗客はあらかじめ定期券ないし回数券、一回乗車券等を購入して車輌に乗り、目的地に行くのであるが、マルハンのパチンコ車輌を視させられ、乗車させられることは、車輌ごとパチンコ・ギャンブル仲間同様にみられることになる。しかし、乗客はパチンコ車輌に乗ることを契約内容としていない。むしろ、被告大阪市は本来、原告らを含む乗客にこのようにとらわれる状況をもたらさない自由かつ適正な車輌にて運搬することが運送契約上の内容である。
  近年、被告大阪市の地下鉄の広告は車内の商業広告などが過剰となっており、その過剰広告で客を「とらわれの客」としないように大いに抑制するべきである。
ところが、被告大阪市の市営地下鉄は車内広告の無軌道ぶりが余ってついに全車輌パチンコ車輌を生み出したのである。
  これらの車輌での運搬は、本来の通常車輌での運搬を想定している乗客への背任的違約行為である。
この契約違反により、日頃地下鉄を利用する市民は本来の良好なサービスを受けられず、駅のプラットホームにいて否応なくパチンコ広告を視させられる被害を受け、パチンコ車輌の「とらわれの客」とされたり、敢えて遅れる後続車輌に乗らねばならないといった迷惑・不便を受けている。
よって、この乗客との契約上の義務からも差し止めを求める。

第3.損害と賠償責任
 大阪市営地下鉄のマルハンパチンコ車輌は、交通局とマルハンないし広告取扱会社との共謀によって生み出された。マルハンの儲けと利益は莫大である。被告大阪市にとっては、これにより広告収入が一定得られていると弁明するのかも知れないが、その一方で乗客に不快不便を強いて精神的苦痛を与えるものである。
 乗客・市民が無理矢理マルハン広告を視させられたり、一旦視た後で眼を背けたり、「とらわれの客」を避けるため当該車輌に乗らないことでの損害を考えると、精神的苦痛を中心として慰謝料請求権があるといえる。各自損害金の一部の5万円を損害額として請求する。

第4.まとめ
 株式会社マルハンは東京と京都に本社を持ち、2012年3月期で2兆791億円を売り上げ、経常収益は521億円、パチンコホールだけで全国273店舗を展開する会社である。そして、大阪市の地下鉄さえ自らの金で車輌ごと「買えた」と豪語するのであろう。
被告大阪市は公共自治体で、収益、金儲けのためなら何でもするということであってはならず、少なくとも市民や乗客が想定していないパチンコ車輌を直ちに止めるべきである。
被告大阪市にはパチンコ依存症、ギャンブル依存症の者が何万何十万人といる。その病的賭博に対する対策こそ必要である。しかるに、被告大阪市はその対策・対応も全くできていない。そして、とにかく広告収入さえあればギャンブルでもパチンコでも構わないという節を曲げた無節操さに陥っている。
このような事態を回避すべく、パチンコの拡大に伴う依存症の被害を憂える民間団体は、このような広告の抑制を求めている。被告大阪市はすみやかに正しい施策をとることもせず、パチンコ車輌を是正しないので本訴に及んだ。


証  拠  方  法
1 甲第1号証     要望書


附  属  書  類
1 訴訟委任状              3通
2 甲号証写し              1通
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