2019年05月13日

なくそう!ギャンブル被害 会報第78号

【目次】表の万博、裏のカジノ/大阪カジノ万博物語(7)/論説:公営競技の脱税、その間接主犯は政府である/依存障害シリーズ➅依存症・依存障害/コラム:カジノと万博で国民のパブコメを“無視”する政府・自治体、サンクトペテルブルグのパラドックスと効用理論/書籍紹介/カジノギャンブル百人一首(3)/NEWSピックup/事務局だより/ギャンブルオンブズ4コマ漫画


表の万博、裏のカジノ

1.2025年日本国際博覧会(万博)を大阪夢洲でやりたい政財界は、政府と経団連、そして大阪府・市がそれぞれ推進団体をつくり、政府も府市も税金を使って計画に邁進中。
しかし、国際的には「夢洲」万博に決まっているのでなく、関西エリアでの開催ができるように“関西国際博”と名付けられている。
  一方、IRカジノは、カジノについてはできる限り隠しつつ、MICE施設やリゾートホテルのIR計画として進め、その裏でカジノをどうするか検討している。IR実施法は、2018年7月20日、具体的中身(331点)は政省令やIR委員会に丸投げで法の成立のみが強行された。そして2019年4月、政府は政令を決めたが、カジノの詳細については2019年7月発足のカジノ委員会が決める規則による。 
こうした強行スケジュールにもかかわらず、大阪維新府市政はそれでも遅いとばかりに、夢洲に万博会場とIR会場の用地確定と造成、そして夢洲への交通アクセスのため資金繰りと建設を具体化させている。
  松井・吉村は、万博では主催者の国の金と府市、財界寄付金で、IRでは海外カジノ業者の投資を当てにしており、夢洲IR(カジノ)を万博前の2024年にも開業したいとして完全に“前のめり”である。これに対して政府(経産省)は、日本で当面3か所、将来10年後10か所のIRを想定し、IR法の下で政省令や規則を順次定め、万博後のIR開業で十分としている。
全国で最初のIR開設を大阪夢洲に開設したい維新吉村・松井府市首長らは、こうした政府構想による法令規則の制定を待たず、米カジノ業者らと接触しつつ前倒しで業者を決めようとしている。
2.その手続が4月24日に決定された。IR事業者から事業概要(コンセプト)を募集するというもので、この応募には「手付金約束」ともいえる202億円の負担が条件づけられている。これはメトロ夢洲駅など延伸費の一部とされるが、もとよりこの負担条件は応募時に実際に支払ったり供託する訳ではない。夢洲駅延伸・建設には多大な経費が必要で、IR事業者が夢洲IRに進出する場合、その集客には夢洲駅の恩恵を受けるのだからIRの本体建設経費(9000億円以上)の他にも負担が必要ということを念押しするものだ。
  そしてこのコンセプトを元に、府市は2019年秋にも業者の事情聴取、2020年春にIR事業者を決定するという。
 だが、前記のとおり国のカジノ管理委はこれから7月に発足し基本方針を決めて、2020年に国のカジノ(IR区域)整備計画の申請受付、2021年に国交大臣による地区認定(国内3か所)、管理委による免許交付となり、これらを経てやっと建設に着手することになる。
ところが、大阪夢洲のように地盤も安定しない埋立地に安全なIR施設、MICEを建設して開業までに至るには難工事となり、2024年では間に合わないといえる。
3.このように、表は万博(国際博)、裏はカジノ(IR)という形で計画しているが、この手続きはIR事業者の選定において行政手続法上でも違法である。本来は法の要件が定められ、国内業者を含めて十分なガイダンスの機会を与え、法に則って入札、公募手続をすべきであるところ、事実上トランプ大統領側近の海外事業者を本命として扱うなどしている。もちろん今は前述のとおり法令規則が定められておらず、入札応募要件さえ決められない。つまり2021年、2022年にやっと行える手続きであり、大阪府市の前倒し手続は、IR事業者の「仮決め」としても許されない。
  そもそも提案型の応募手続きにしても、正式な条件のないまま公募を始めて事業者を決定し、その後で国の条件の下での正式公募に参加できる形をとるなど闇手続で、およそ行政としての公正手続きではない。

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大阪カジノ万博物語(7)
正体を示した夢洲カジノ万博
 夢洲万博についてはこれまで会報で度々論じてきた。大阪カジノ万博物語(6)としてそのドタバタ申請(2017年11月号)、大阪府市のカジノに前のめりする実態(2018年1月号)、パリの万博立候補取止め(2018年2月号)、IRカジノ法案国会提出と夢洲カジノのショーケース(見本市)・万博カジノと宝くじ(2018年5月号)、夢洲万博の「買収」誘致と財界の実態(2018年7月号)を書いている。そして、夢洲万博・IRの“地獄”になるリスク(2018年10月号)、翌2018年11月号ではIRカジノへの政府の動きと共に、台風21号被害の報告によりそのリスクを証明した。
 しかし、2018年11月23日、BIE加盟国への242億円の“バラマキ宣伝”が奏功し、夢洲万博誘致に勝利すると、今まで隠してきたカジノ万博の正体が露骨になった。
 具体的には万博開催2025年の前、2024年にもIRカジノを開設するとして松井らは業者選定に入ることを示した。万博の唯一の地下鉄「夢洲駅」や連絡橋整備のための公共投資資金として、海外IR事業者の資金負担条件も明らかにした。同12月12日、松井知事はIR万博を広く企業説明すると共に、米のラスベガス・サンズ(R・ゴールドスティーン社長)に対し、IR事業者選定には地下鉄延伸費用の一部負担を求めていると明示した。ラスベガス・サンズは、府市より夢洲地下鉄に約200億円の負担を求められたことを明らかにし、サポートしたいと前向きであることを示している。
 松井・吉村は、トランプ大統領の取り巻きであるラスベガス・サンズにいち早く事業者選定の条件として地下鉄費用約200億円の負担を求めた。このように夢洲万博は完全にカジノ万博である。しかも、2025年万博前に夢洲にアメリカ業者のカジノを作るというものだ。
 既に市は、万博に向けて150億円以上の埋立費用等の投入を強行採決している。松井・吉村首長は、IR関係業者とIR推進局との接触を禁じ、自らが「窓口一本化」となってIR業者の一部と接触している。その交渉内容は必ずしも公開されていない。その手法はIR業者への「おもてなし」であると同時に、秘密の交渉という「ウラ」がある。こうしてIR誘致が進められているのである。

論説  公営競技の脱税、その間接主犯は政府である
  ―会計検査院の脱税調査と関係政府機関の放置「共犯関係」―

1.2018年10月、会計検査院が公営競技の大口脱税(2015年対象)を選び調査した。2015年の1年間に1回の払戻金が1050万円以上だったケースは約530口で計約127億円だった。これに対し、確定申告で1千万円以上の一時所得や雑所得を申告した約1万8千件を調べると、当せん者からの申告は50数件で、金額としては計20数億円だったという。すなわち、件数では10%未満、金額では15~16%という計算になる。結局100億円以上が所得申告をせず、納税義務者の84~85%が脱税していた。
  このような公営競技の「脱税天国」は、それぞれを所管する監督省庁の指導下で起こっている。競馬は農林水産省、競輪・オートレースは経済産業省、ボートレースは国土交通省の所管である。また、財務省や国税当局にしてもあえて源泉徴収せずに自主申告の名の下に脱税を放置している。  そして、これに国や地方自治体の公営競技を指揮する立場である総務省が加わる。
  これらの関係省庁に対し、①会計検査院の指摘以前の対策、②指摘後の今後の対策ないし既対策、③払戻金について源泉徴収をしない事情(しようとしないことも含めて)の3点について、平成31年3月19日付にて次の内容の情報公開を行った。
1.2018年10月11日全国の報道紙によると、会計検査院が公営競技の1千万円以上の払戻金について調べたところ、2015年に1回の払戻金が1050万円以上だったのは約530口、計約127億円分あったが、これに対し、1千万円以上の一時所得や雑所得の申告約1万8千件を調べた結果、公営競技の当せん者からの申告とみられるのは約50数件、計20数億円にとどまったという。
  つまり、上記の2015年高額払戻金約127億円のうち、申告はわずか20数億円で、100億円以上が所得申告されず、約80%余が脱税されたということである。
  本来、払戻金からその当たり券代と特別控除50万円を差し引いた利益の2分の1が一時所得となり、申告しなければならない。1050万円の払戻金の場合、500万円近い一時所得があるのに、上記報道によればこれらの客のうち8~9割が申告していないことが判明した。
  公営競技とは、本来刑法が禁ずる賭博開帳行為を行政主体が自ら行うもので、その弊害(治安、法令違反、依存症、反教育性)がある。にもかかわらず、戦災復興などを口実に収益金目的で始められ続けられてきた。
  しかし、収益金の一方で脱税があるのでは、国民の賭金を収益とする財政目的の基礎を失わせる。この脱税は今日の公営競技の弊害の中でも重大である。
  これらは、(1)公営競技の主催者である国、自治体、(2)公営競技の監督庁である農林水産省(大臣)、経済産業省(大臣)、国土交通省(大臣)、そして(3)財務国税当局の「怠惰」によるもので、会計検査院が座視できないとしたのは当然である。
2.この会計検査院の指摘点(払戻金の未申告・脱税問題)に関し、貴省庁が、①これまで(指摘以前)どのような対策をとってきたのか、②(指摘を受けて)今後どのような具体的対策をとるのか(または既にとったのか)、③払戻金収入について払戻金交付時に源泉徴収をする方法はないのか、していないのは何故かその理由、以上①~③がわかる文書または電子データを求めたい。

2.これに対し、財務省、国税当局や経産省の情報公開窓口からは電話があり、①③の文書がない場合に不存在回答が必要かとの問合せがあった。
  ②は結局国税局の指導を中心に自主申告を促す書面は作成して競技場に置くように頼むぐらいのようだ。それも国税局の回答で判明する。全て5月中にも回答が出そうである。

3.情報公開に対する回答は次のとおりであった。 
(1)国土交通省:モーターボート
   平成31年4月19日付開示決定  国税庁からの要請対応メール
  ①2018.12.21付 国税庁職員 → 国交省、農水省、経産省職員宛て
国税庁が発行する「国税庁からのお知らせ 払戻金の支払を受けた方へ」と題する確定申告について通知する内容のリーフレット等につき、一部変更にあたりその確認を求める国税庁からのメール(変更点は1箇所、「所得」という表記を「一時所得」とするというもの)
  ②2018.12.21付 国交省職員 → 全国モーターボート競走施行者協議会宛て
    同リーフレットの確認を求める内容
  ③2019.1.9付 国税庁職員 → 国交省、農水省、経産省職員宛て
    同リーフレット改訂版(競馬等の払戻金が一時所得であることを明示する修正を加えたもの)を国税庁HPに掲載したことを通知するもの。施行者等のHPに同リーフレットをリンクし、場内等への掲示・備付等を順次進めるよう依頼する内容。
  ④2019.1.9付 国交省職員 → 全国モーターボート競走施行者協議会宛て
    国税庁HP内同リーフレットへのリンク作業と、場内でのリーフレット備置について他公営競技との横並びも考慮の上最終的な検討結果を知らせるよう依頼する内容。
  ⑤2019.1.18付 国税庁職員 → 国交省職員宛て
    返信元メール2019.1.17付 国交省職員 → 国税庁職員宛て(オフィシャルウェブへの掲載予定(1月21日の週早々)とリーフレット配備方法(3月15日まで競走場、場外発売所の高額払戻金窓口に数部配備)を報告するもの)に対し、了解の旨伝える内容。

(2)農林水産省:競馬
   平成31年4月22日付開示決定  国税庁からの要請対応メール 
  ①2018.12.25付 農林省職員 → 「〇〇次長」宛て(〇〇はマスキング、所属わからず)
    国税庁の協力依頼の件として、a)国税HP画面のイメージやパンフ等を全主協、各主催者で共有、b)各主催者等のHPにリンクを貼る準備作業 を指示し、c)リーフレット配備方法について通知するもの。
   添付ファイル:「国税庁からのお知らせ 払戻金の支払を受けた方へ」「平成30年分 公営競技の払戻金に係る所得の計算書」「公営競技の払戻金の支払を受けた方へ」
  ②2019.1.10付 農林省職員 → 「〇〇次長」宛て(〇〇はマスキング、所属わからず)
    国税HPが更新されたので、上記b、cの点について作業を進めるよう指示するもの。
  ③2019.1.15付 農林省職員 → JRA職員
    返信元メール2019.1.11付 JRA職員 → 農林省職員宛て(JRAのHPへのリンク掲載予定1月14日17時より、現金事務所で1月19日~3月10日までチラシを設置する旨の報告)に対し、確認したと伝えるもの。

(3)経済産業省:競輪、オートレース
   平成31年4月22日付開示決定  国税庁からの要請対応メール等
  ①2018.1.9付 国交省③に同じ
  ②2019.1.10付 経産省職員 → 全国競輪施行者協議会職員宛てメール
    国税HPの更新を受け、国税リーフレット等のリンク付けと場内等への掲示・備付を予定どおり対応するよう指示するもの。
  ③2019.1.10付 経産省職員 → JKA職員宛てメール
    国税HPの更新を受け、国税リーフレット等のリンク付けを指示するもの。
  ④2019.1.10付 経産省職員 → 全国小型自動車競走施行者協議会職員宛てメール
    国税依頼につき、全輪協が各施行に依頼文書を発出するので、同様の文書を全動協からオートレース各施行に発出するよう指示するもの。
  ⑤「国税庁からのお知らせ 払戻金の支払を受けた方へ」
  ⑥「平成30年分 公営競技の払戻金に係る所得の計算書」
  ⑦「公営競技の払戻金の支払を受けた方へ」

<以上の(1)~(3)は、横見をし、談合しつつの対応である。>

(4)国税庁
   平成31年4月19日付期限延長通知 → 開示決定等期限 5月21日
<しかし、国税庁の対応は他の情報公開からほぼ明らかである。要するに一時所得の“申告待ち”である。>

(5)総務省
   平成31年4月18日付不開示決定
   「本件開示請求に該当する文書について、探索したものの、その存在を確認することができないため(不存在)。」
<宝くじを所管する省でもある総務省は、地方自治体の脱税放置に全く無放任である。>

4.ギャンブルオンブズマンによる抜き取りチェック
  競技場や場外券売場で実際に検査してみた。しかし、一部では国税庁が考えたお知らせという文章が会場隅に貼られているも、それすら5月に入っても掲示のないところも多い。
「国税庁からのお知らせ」とは、払戻金は一時所得として確定申告が必要となる場合があるとし、自ら開催日、開催場、レース、払戻し金に係る受取額、払戻金に係る投票額をメモして控えておくようにとの案内である。一時所得は、{(払戻金に係る年間受取額)-(払戻金に係る年間投票額)-50万円}×1/2 で計算し、確定申告書を作成するには国税庁HPが便利だという。上記の「払戻金に係る年間投票額」とは、払戻金があったものの投票額費用に限られ、ハズレ投票は含まれない。
しかし、国税庁モデルの計算書は、払戻しの場所に置いていなかった。国税庁HPのリーフレットの掲載は2019年1月9日以降始まったようだが、4ヶ月を経ていまだその案内さえ徹底していないのである。

5.だが、これらの半年余の政府内閣各省庁の対応をみると、第一に国税庁の対応待ち、第二に全て横見で率先するところなしであった。これでは憲法90条の会計検査院の検査について、誠実に対応しているとはいえない。財政法39~41,46条による会計検査院の報告もズサンで、国会にくわしいレポートをしているか疑わしい。
  この脱税は、公営競技の主催者と国税当局が協力すれば容易に遺漏なく毎年100億円余に対する徴税が可能であり、逆にしないのは主催者とそれを指導監督する政府省庁があえて放置するという脱税の「共犯」になるものである。国の脱税は同時に約10%の地方税(県市民税)の脱税にもなる。

依存障害シリーズ  第6回  依存症・依存障害

 今日本で依存症(障害)といえる「病気」の多いことは本紙でもかねて紹介してきた(会報4号「依存症いろいろ」、5号「依存症を増やすもの」、9号「依存ないし依存症の考え方」、10号「同Ⅱ」、19号「ネット依存などギャンブル依存」、29号「病的依存症をめぐる用語と現状」「『依存症』か『障害』か?」etc)。そして、会報62号からは「依存障害シリーズ」としてその多様性について述べている。(第1回「ネトゲ廃人」、63号/第2回「『やめられない心』とFIX産業」、69号/第3回「ゲーム依存とスポーツ・ベット」、70号/第4回「依存・障害用語辞典(ア~ノ)」、71号/第5回「同(タ~ワ)」)
 さて、筆者が考える、現代日本に蔓延する依存の種類をランキングにしてみるとこうなる。
1位:スマホ依存(ケイタイを含む)
  スマートホンと一口に言っても、インターネットからライン、フェイスブック、ツイッターなど軽度のものから「SNS中毒」まで含めると5000万人は超えよう(日本人の所有台数は1億。その半数以上との予想)。電車の中でも乗客のほとんどが操作している。
2位:ギャンブル依存
  病的依存者は、多い統計では532万人、その後300万~100万人と様々な推計値が公表されている。
3位:アルコール依存
  日本人にはアルコールを飲めない人もいる。飲酒者は3000万人としても依存する者は200万人以上だろう。しかし、アルコール依存者の政府公認はこのうちなんと2万人台。これはいわば完全な「アルコール中毒者」で少なすぎる評価である。(世界中では2500万人というがこれも低い。)
4位:タバコ依存
  タバコは西洋から日本に入り、江戸時代に大衆化した。明治以降はタバコ税と専売公社の下で酒以上にいつでもどこでも呑むものとなり、莫大な依存者を生んだ。タバコの害についてようやく世界的に広まり、今後一層少なくなることが期待される。
  しかし、成人の男30%、女10%が喫煙者で、その各10%に重症のニコチン中毒を含めて依存の疑いがあるとすると、男3%、女1%で日本だけで数百万人に及ぶことになる。
5位:ゲーム依存
  パソコンやスマホなどだけでなく専用機による普及も併せると意外に多いと思われる。子どもの依存も多い。
6位:買物依存
  物的対象で所得の範囲内であれば罪は軽い。ストックの限界もある骨とう品や嗜好物品も含めると資産家による依存が多い。個人の金で病的と評価されにくい。
7位:摂食障害
  拒食症と過食症、異常食もある。身体的な病と精神的疾病が伴う深刻な病だが、公表数としてはまだ少ない。
8位:性異常・セックス依存
  自ら病という認識がない者が多い。ほとんど正しい統計はない。
9位:万引、クレプトマニア
  警察など犯罪対策としてリピーターへの対応が求められる。


コラム  カジノと万博で国民のパブコメを“無視”する政府・自治体

1.特定複合観光施設区域整備法施行令(IR施行令)案と国民無視
(1)政府(IR推進本部事務局)は、平成31(2019)年2月1日、IR施行令案について行政手続法に基づく意見公募手続(パブリックコメント/パブコメ)を開始した。不親切なHPの案内であるが、これによると所定様式で2月1日(金)から3月4日(月)までに必着で提出とされていた。
   検討のための提供資料は行政特有の引用や読み替えが多く難解で、施行令案はA4版2枚の概要もあったがその内容はわかりにくいものであった。また、本部は2月7日に資料を一部修正するも、意見公募期間の延長手続きをしなかった。
ちなみに、当会は2月19日付で意見を提出している。(会報76号掲載)
(2)パブコメは当会以外にも多数提出されたはずである。しかし、本部は意見提出締切後すみやかにその全体の集約や対応コメントなどを公表することはなかった。
(3)そして、政府は3月26日付でIR施行令を閣議決定した。その内容は、パブコメを求めた案と同じであった。
(4)報道によると、安倍首相は「これまでにないスケールとクオリティを求める」ものと述べたという。MICE最大の会議室は6000人以上、展示場は2万㎡以上など3タイプを定めており、宿泊施設は10万㎡以上、カジノの床面積はIR施設床面積の3%までとしている。
このようにIR施行令の閣議決定には国民のパブコメは全く反映されておらず、本部にはその気持ちさえないというヒドイものである。
(5)そして、3月29日、IR施行令の公布と共にパブコメの結果が公表された。提出意見数は全135件、これを踏まえた案の修正は「無」とある。 

2.ギャンブル等依存症対策推進基本計画(案)と国民無視
(1)平成31年3月7日、内閣官房ギャンブル等依存症対策推進本部は、基本計画案について、同日より3月26日までパブコメ手続により意見を求めるとした。
   行政手続法のパブコメ手続は、少なくとも30日の期間を当たるように定めており(39条)、仮にやむを得ない理由があるときには、パブコメの公示においてその理由を明らかにしなければならない(40条)。ところが、この公示では実質募集期間は20日しかないにもかかわらず、そのやむを得ない理由は公示されなかった。
(2)基本計画案はA4版116頁(目次だけで5頁)と長文。概要資料も付されているものの僅かA4版1枚に集約されており、全体を理解するには時を要するものであった。
   また、真実理解するには、本部(内閣官房長官、本部長)とギャンブルの関係省庁等(警察庁、国交省、経産省、法務省、文科省、消費者庁、金融庁、厚労省、総務省、自治体)との関係について理解できておらねばならない。しかも、狭義の依存症対策に限っても、各地の関係省庁、医療機関、精神保健福祉、保健所、消費生活センター、自治体・総務省等の相談窓口担当、日本司法支援センター、矯正施設、保護観察所、市区町村教育委員会をはじめ20~30の関係事業等団体が、何をどうしているかを知り得なければならない。しかるに、示された計画案は、内容不明のまま「整備」「改善」「検討」が必要とするなど、およそパブコメ手続に値する具体的なものではなかった。(例えば、競輪・オートレースのアクセス制限でいえば、「あり方について検討を実施する」(20頁)というだけだった。)
(3)このような拙速なパブコメ手続が強行され、しかも内容的にもどれだけ計画に参考、寄与されるのかといえばほとんど期待できない。
   本部は、基本計画を所与のもの、不動のものとして推進している。「推進関係者会議」を設置し、その委員として15名を選んでいるが、現状のギャンブル事業やその不十分な対応を肯定している者が多い。自助グループ、医系、福祉系、消費者代表とされる委員もいるが、その選任基準も不明である。ギャンブル事業者のヒモ付きとの批判を受ける者もいて、この会議にギャンブル依存解消の期待をすることは困難である。このままでは基本計画の追認会議となる可能性が高い。

3.大阪市の夢洲都市計画のパブコメと市民無視
  大阪市夢洲地区は現在、コンテナ物流地区と準工業地区になっている。これを松井・吉村首長はIR・万博を夢洲に誘致するため、準工業地区の埋立地分譲を停止させていた。そして2019年4月、都市計画の変更に向けて動き、パブコメ手続に入った。
 しかし、実はこの都市計画変更の前に、夢洲用地のIR・万博会場化を決めていた。市の2017年版パンフではコンテナターミナル、同関連地区、物流地区、産業廃棄物用地としていたが、2018年12月版では完全に変更し、IR予定地70ha、万博予定地155haなどが既定であるように書いている。2018年12月版に掲載の年表は2017年7月の開港150年式典の挙行が最後であるように、2017年の初めから準備し、2018年11月23日の日本国際博の誘致さえ決まっていない段階、もとよりIR計画など用地を含め何ら決まっていない時に前倒しして作成していた。すなわち、2019年4月の都市計画変更手続さえないのに先決めして、その後にパブコメをしているのである。

4.パブコメ手続制度について
  1993年の行政手続法制定時から疑問の多いものだった。以来、数多くの政府・内閣の命令等について意見公募手続がとられてきた。しかし、その寄せられた意見による命令等への反映という点では問題が多すぎる。
  パブコメは行政手続きの“飾り”でさえなく、“煙幕”として使われている。


サンクトペテルブルグのパラドックスと効用理論
 18世紀、ダニエル・ベルターイの論文。参加者が賭けに負けると次に賭金を2倍にする仕組みのゲームでは、参加者は負けが続いてもいずれ勝つとの期待が無限大になる。だが実際は参加者の賭け金が大きいので、参加できる者は限定される。これは富の増加の効用は資産額に反比例するという効用理論でも説明される。
 ちなみに、倍々ゲームでは1,2,4,8,16・・・と10回で1024倍となり、10回連続で賭けて10回目にやっと勝って0になるという計算になる。

書籍紹介 近年、万博の歴史を紹介する文献が出版されている。

1970年大阪万博は、1966年から1970年にかけてそれ自体を是とし無条件に紹介する立場の出版物が多く出された。中にはこれを批判する出版物もあった。以降、1975年沖縄海洋博、1985年筑波科学技術博、1990年国際花博(大阪鶴見)、2005年愛知博については賛否の出版があった。こうした当時の出版傾向も下記の文献などにまとめられている。

1.『万博幻想』 吉見俊哉 (ちくま新書 2005.3.10発行 860円+税)
東京大学大学院の情報学の教授。2005年愛知博に向けて、万博への幻想を作用させた政治に焦点を置く。成長のシンボルとしての万博が、1975年沖縄海洋博、1985年筑波科学技術博、そして愛知博で利用されてきたこと、そして今後の上海、麗水万博に「幻想」の行方を問う。

2.『万国博覧会の二十世紀』 海野弘 (平凡社新書 2013.7.12発行 760円+税)
  早稲田大学を卒業後、出版業界に入り、万博を研究。1970年「反博」だった氏は、万博の歴史やその後の将来性まで検証。19世紀には帝国主義祭典の性格をもち、20世紀の世界大戦をはさんでマシンエイジからヒューマニズム、平和、進歩などのテーマの祭典となった。そして今、不要論からBIE条約は見直しを求められているという。

3.『万博の歴史』 平野暁臣 (小学館 2016.11.2発行 1500円+税)
  大阪万博にも関与した氏は、空間メディアプロデューサーで岡本太郎記念館館長。1985年以降の14万博を全て訪ねて調査。パビリオンのプロデューサーでもある。インサイドの立場にある氏は、史上最強のイベント“万博”が絶滅か再生かの岐路にあるという。
  特に大阪万博から環境変化の荒波の中で存続の意義が問われていること、21世紀において時機を逸し袋小路にある万博は終焉を迎えるのかと問う。そこでの小見出しは「万博史におけるふたつの視点」「万博のライフは80年」「未来のプレゼンでは人は呼べない」「大衆の欲望からズレていく万博」「いまなお抜け出せない20世紀情報観の呪縛」「万博の価値を決めるのは『答え』でなく『問いの強度』」「再興の鍵は21世紀の情報感性」。
氏の万博に関する呼び名、ネーミングは週刊誌の見出しのようにキレが良い。例えば沖縄博は「大阪万博の“変奏曲”」、大阪万博は「電通博」「万博という戦争から撤退した米ソ」など、ドイツ博は「合理的だが楽しくない」「お金を払って説教を聞きに行く」「なにも語らないパビリオン」「博覧会の墓場」等と酷評し、入場者は目標の半分以下の1810万人で1200億円の赤字とする。また愛知博は「公共工事の抱きあわせ」「失敗することに失敗した万博」、上海博は「特別扱いのお祭り」という。

4.『図録 万博の歴史』 平野暁臣 (小学館 2017.11発行 4800円+税)
  1851年万博から1970年万博までについて大型B4版で写真や絵図を豊富に掲載。ビジュアルで万博を追える。日本の内国勧業博覧会(計5回)と1940年の紀元2600年記念日本萬国博覧会(東京・横浜)計画(日中戦争と欧州緊迫の時勢により「無期延期」となり実現せず)も紹介。1970年大阪万博は7頁にわたり紹介する。
筆者は本書の最後で万博について、「かつてのような無邪気に未来の夢を描くことはできない」「未来のヴィジョンを啓蒙的に語るという構図自体が成り立たなくなっている」「未来とエンターテイメントの蜜月が解消されてしまったのだ」「大阪万博は国家や企業が気兼ねせずに楽天的な未来を語ることができた、おそらく最後の万博だ・・・輝ける万博は大阪で終わったのだ」という言葉でしめている。
万博をビジュアルに知りたい人にはオススメ。大阪夢洲万博など大阪万博の奇跡を追いかける無謀なものだということが、大阪万博を推進した筆者の本音からよくわかる。

カジノギャンブル百人一首(3)
今回も小倉百人一首の替え歌です。(41~60番)
41.恋してるわが市もこれから立ちにけり 人知れずこそ準備すすめし <愛知常滑>
  恋すてふわが名はまだき立ちにけり 人知れずこそ思ひそめしか  (壬生忠見)
42.3ヵ所の特区は厳しなかなかに 非力なわが市恨みざらまし    <静岡熱海>
  契りきなかたみに袖をしぼりつつ 末の松山浪越さじとは     (清原元輔)
43.カジノなど誘致困難 調べれば 未来のことを思わざりけり    <痴呆自治体>
  逢ひ見ての後の心にくらぶれば 昔は物を思はざりけり      (権中納言敦忠)
44.誘致への 想いに夢をつのらせて ギャンブル依存 俺知らぬとは <誘致自治体>
  逢ふことの絶えてしなくはなかなかに 人をも身をも恨みざらまし  (中納言朝忠)
45.あわれとはカジノかよう金のため 借金ついに盗人になる     <盗人公>
  あはれとも言ふべき人は思ほえで 身のいたずらになりぬべきかな  (謙徳公)
46.夢洲に渡る客人 金が絶え ユスリタカリの渡世の道かな     <カジノヤクザ>
  由良の門を渡る舟人かぢを絶え ゆくへも知らぬ恋の道かな    (曾禰好忠)
47.カジノにて仕組まれしEGM 依存せざる人はなきというべき   <電賭機>
  八重むぐら茂れる宿のさびしきに 人こそ見えね秋は来にけり   (恵慶法師)
48.風をいたみ寄せる高潮激しきに くだける堤 思う夢洲      <皆元海>
  風をいたみ岩うつ波のおのれのみ 砕けて物を思ふころかな    (源重之)
49.カジノとは客の出す金 夜も昼も 集めて稼ぐボロイ商売     <海外業者>
  みかきもり衛士の焼く火の夜は燃えて 昼は消えつつ物をこそ思へ  (大中臣能宣朝臣)
50.金のため 惜しからざりし いのちさへ 賭けさせ奪う カジノ依存で <金場賭高>
  君がため惜しからざりし命さへ 長くもがなと思ひけるかな    (藤原義孝)
51.収奪と今やいうべきカジノでの さしもしらじな ハウスエッジを <不審実損>
  かくとだにえやは伊吹のさしも草 さしも知らじなもゆる思ひを  (藤原実方朝臣)
52.あけぬれば負けるものとはしりながら なお賭けつづけ 朝ぼらけかな <不審大損>
  あけぬれば暮るるものとは知りながら 猶恨めしき朝ぼらけかな   (藤原道信朝臣)
53.なげきつつ賭けをやめれぬ依存症 いかに悪しきものとかは知れ  <依存道場母>
  嘆きつつひとり寝る夜の明くるまは いかに久しきものとかは知る  (右大将道綱母)
54.射幸心 ゆくすえまでは絶えざれば 今回限りと賭けをやりたり  <賭事障害>
  忘れじのゆく末まではかたければ けふを限りの命ともがな     (儀同三司母)
55.依存症 長く警告されたるも 自己責任となおカジノ業      <IR推進局>
  滝の音はたえて久しくなりぬれど 名こそ流れてなほ聞えけれ    (大納言公任)
56.やめられぬこの世の中の賭事賭業 いまひとたびの射幸求めて   <カジノ式部>
  あらざらむこの世のほかの思ひ出に いまひとたびの逢ふこともがな(和泉式部)
57.勝ち負けを続けて己れ失いて 大負けしてる夜半の頃かな     <赤式部>
  めぐりあひて見しやそれともわかぬまに 雲かくれにし夜半の月かな(紫式部)
58.リゾートに家族そろってお越しやす いで自制心 忘れやはする  <カジノサンズ>
  ありま山ゐなの笹原風吹けば いでそよ人を忘れやはする     (大弐三位)
59.ためらわずバカラ続けてさ夜ふけて かたぶく家も運の尽きかな  <赤染家族>
  やすらはで寝なましものをさ夜ふけて かたぶくまでの月をみしかな(赤染衛門)
60.大勝ちを狙いて道の遠ければ まだふみもせず阿呆の企て     <小式部>
  大江山いく野の道の遠ければ まだふみも見ず天の橋立      (小式部内侍)

ギャンブルNEWSピックup (2019.4.5~5.10)

2019.4.5  神奈川  「カジノ反対」医師らが市民の会 横浜市中区の寿地区
      ヤフー  シンガポール カジノ税と入場税を引上げ、依存防止へ
  4.6   ヤフー  パチンコ業界を悩ませる「6号機の憂鬱」。その裏事情を解説する
  4.8  ダイヤモンド  カジノディーラー育成学校の志願者が急増中、10代の若者から主婦まで
      共同   ハウステンボスの一部を買収 長崎・佐世保市、IR誘致で
     東洋経済  パチンコに狂う父から20歳で逃げた息子の告白
  4.9   長崎   IR誘致へHTB30ヘクタール土地用意 県、佐世保市と合意
      フライデー  “ハマの首領”が安倍政権を批判「横浜にカジノは作らせない!」
      ヤフー  園田競馬場の入門マンガ「公式なのに生々しい」と評判
  4.10  <当会 会報第77号発行>
紀伊民報  「経済効果は絶大」と説明 IR誘致で和歌山県
      千葉日報  オンラインカジノ紹介、陸自隊員7人処分 習志野駐屯地
  4.11  FNN  パチスロ店で“闇スロット” 従業員2人を逮捕
  4.13  ヤフー  パチンコの新台入替自粛が、業界に与える影響とは?
  4.16  共同   大阪副市長を副知事に起用へ 万博、IR誘致へ態勢強化
      ヤフー  「健康ゲーム指導士」100人以上が取得 カジノ型介護施設
  4.18  静岡   統合型リゾートテーマに講演会 ギャンブル依存症解説 牧之原
  4.19  共同   ギャンブル依存症対策、閣議決定 ATM撤去、入場制限
  4.20  共同   カジノ店で銃撃疑い男逮捕、大阪 2人けが、繁華街・ミナミ
  4.21  ヤフー  ギャンブル依存症「自己申告・家族申告プログラム」は本当に抑止力になるか
  4.24  苫小牧民報  IR、苫小牧市民に発信 米ハードロック苫小牧支店開設
      時事   IR事業者、来春にも決定=大阪府、国に先行しコンセプト募集
  4.25  神奈川  「カジノ導入に反対」 横浜港運協会が新協会設立へ
      ヤフー  大阪市の松井市長「万博開催前のIR全面開業あきらめてない」
      神戸   「ギャンブルの借金返済に」JA職員が797万円横領 定期預金や金庫から
      AERA   食べ物依存、性依存、買物依存「依存は誰にでもおこり得る」と医師が指摘
  4.26  ヤフー  「築地ブランド」地盤沈下、市場移転で客離れ-カジノ候補との見方も
      福島   喜多方市職員87万円着服 懲戒免職処分「ギャンブルに使った」
  4.28  ヤフー  2020年代半ばのオープンが期待されるIR、経産省で研究ワーキンググループ実施
  4.29  毎日   30年で大変化した「ラスベガス」
  4.30  ヤフー  ネット依存ゲーム依存の心理:叱られてやめられる人、やめられない人
  5.3  マカオ   石井国土交通大臣がマカオ訪問・・・IR施設を視察
  5.4  ヤフー   パチンコ業界「みなし機」完全撤去決議。広がるパチンコ店の怒りの渦
  5.6  ヤフー   ギャンブル対策強化へ、健康被害に関する警告ラベルの義務化など 英
  5.7  ヤフー   10連休、200万円を海外のカジノで大勝ちしたら、確定申告は必要?
      共同    カジノ、高校生から依存症防止を 文科省が解禁見据え手引作成
  5.8  神奈川   カジノ反対の新団体 林市長「さまざまな意見のひとつ」
      産経   常習賭博疑い 経営者の74歳
  5.10  西日本  「自分狂ってるな」ゲーム依存、9年間で8回入退院...男性の苦悩

             



1.カジノ万博公金差止訴訟  次回期日:5月17日午後2時00分

2.ギャンブルリーフレット配布差止訴訟  初回期日:5月24日午前10時00分


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◇◇ギャンブルオンブズ4コマ漫画◇◇

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posted by inoue at 13:40| Comment(0) | 会報 | 更新情報をチェックする
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