2018年05月11日

なくそう!ギャンブル被害 会報第66号

【目次】IRカジノ実施法国会提出/大阪夢洲カジノショーケース(見本市)/夢洲IRは大阪ベイエリアMICEの敵!?/研究:政府のギャンブル依存症調査と課題/コラム:大阪市復興宝くじと万博カジノ/ギャンブルオンブズ4コマ漫画「天文学的確率」/コラム:ケインズの語るギャンブル、伊集院静氏の「ギャンブルで得るもの、失くすもの」/書籍紹介/いろはカルタ賭博考(6)/NEWSピックup

IRカジノ実施法 国会提出

政府は、4月27日、カジノを含む統合型リゾート(IR)実施法を閣議決定し、国会に提出した。政府は閣議に先立ち、「特定複合観光施設区域整備推進本部」(本部長 安倍晋三首相)は、「世界中から観光客を集める滞在型観光が実現される。世界最高水準のカジノ規制で依存症など万全の対策を講じる」とした。
このIR実施法は、①設置数3ヶ所、7年後見直し、②カジノ入場料:日本人及び国内居住外国人より6000円(外国人は無料)、③日本人の入場回数:7日間で3回、28日間で10回の制限など規制はあるも、カジノではギャンブル依存症の発生、暴力団介入参加、青少年への悪影響、マネーローンダリング、脱税手法利用は必至であり、「万全の対策」どころか「世界の最低水準」だ。安倍首相はここでも嘘をついている。
 安倍の嘘は、アベノミクス、戦争法(安保法)、森友・加計問題、労働法改正などで有名だが、福島原発の制御による東京オリンピックや夢洲万博誘致、1億総活躍など大風呂敷口上と巧言令色が特徴である。IR(カジノリゾート)は、経済運営や職域拡大など新利権を目論んで自ら政治バクチをし、安倍政治の破局の様を誤魔化しているだけである。
 なお、IR実施法が成立すると、①自治体・政令市の実施方針、②事業者公募・選定、③国への地域整備計画申請、④国の審査決定、⑤自治体のIR業者契約、⑥建設開業が進む。既に大阪などによる相当の「根回し」が進むが、早くて2023年であり、東京五輪後となるのは必至である。

◇御案内◇  カジノ万博を問うシンポジウムが開催されます
「カジノ万博で経済振興」というファンタジー ~05愛知万博を検証する~
日 時:6月16日(土)13時30分~16時00分
場 所:あべのハルカス23階 阪南大学キャンパス
主 催:カジノ問題を考える大阪ネットワーク
大阪で夢洲カジノショーケース(見本市)

 4月27日、28日、梅田のグランフロント大阪で「第1回 関西IRショーケース」が開催された。「視察」報告する。
大阪夢洲カジノを目指して、大手IR事業者6社(ラスベガスサンズ、ウィンリゾート、シーザーズ、メルコ、MGMら)が集まってカジノを宣伝した。大阪維新の橋下、松井知事、そして大阪観光局、さらにはカジノ推進派である大阪商大の学者による講演などもあった。
6つのIR業者は、コンパニオンにパンフとペンやお菓子、ペットボトルを配らせてサービスしていたが、IRカジノの説明などできないギャルばかりのアルバイトだった。
 一部に大阪観光局の紹介でブース提供を受けた大阪府市、鳥取県、徳島県、滋賀県の観光担当は、観光パンフを置いて案内。インテックス大阪など既設MICEまで呼ばれていた。また、防犯企業や大阪商大など各種学校までブースを出していた。だがブースの出席者と話してみると、ギャンブル依存症の実態などほとんど知らない者ばかりで、ただ内外の観光客が増えれば良いとして参加しているだけであった。
 27日の参加客は、このIRショーを企画した広告企業と協力メディアをはじめ、カジノ周辺で商売をして金儲けをしたいという者の群れだったといえる。
6社の中でも東京に設立したシーザーズ・エンターテインメント・ジャパンは、パンフ3種を置いていた。ギャンブル依存症・問題ギャンブリングは責任をもった事業によって克服できる、むしろ政府とIR業者らの金と、「全ての関係者の協力」によって解決できる問題だというものであった。同社の副社長でラスベガス市の女性市長だったジャン・ジョーズ・ブラックハースト氏の『月刊公明』に投稿したパンフもあった。これらのパンフの内容は結局カジノ本位であり、追って批判したい。

夢洲IRは大阪ベイエリアMICEの敵!?
 維新の大阪府市首長らは、夢洲にMICE開催施設を含めたIR(カジノ付統合型リゾート)の誘致に熱中している。カジノは地方自治体として掲げるには恥ずかしいので、MICE(会議、招待旅行、国際会議、展示会)施設が大阪に必要といって、実際はカジノ付ホテルを推進してきた。
 しかし、実は大阪咲洲には既に、①インテックス大阪(国際見本市会場)、②ATC(アジア太平洋トレードセンター)、③ハイアットリージェンシー大阪、④ホテルクラシア大阪ベイ(旧ホテルコスモスクエア国際交流センター)といった整備されたMICE施設がある。
 ちなみに配布パンフによれば、①は1~6号館からなり西日本最大の総敷地13.8万㎡のMICE施設で、大阪市が建築主で、その外郭団体である大阪国際経済振興センターが運営する。②は6.8万㎡、飲食30店、ショッピング70店、ATCホール7000㎡の他12室の会議場・イベントルーム(1500人~200人対応)からなり、③と④は6000人の国際会議・展示と宿泊、パーティも可能という。
 (公財)大阪観光局は、こんな豪華なパンフ(A4版22頁)をつくって、この①~④の施設について、1つのエリアにコンパクトに集合し、全てが大規模且つ多様なニーズに対応できると宣伝してい
る。地域の空撮や各施設の設備紹介などを載せている。
 このパンフには咲洲の北側に位置する夢洲は、咲洲より小さく、コンテナヤードが見えている。咲洲の整備ぶりには遠く及ばない。
 すなわち、今回、維新首長らが夢洲IRをいう前に既に、そのごく近隣の咲洲に西日本最大級のMICE施設が存在しているのであって、夢洲にMICEをつくれば咲洲MICEはまさに「商売敵」となるのである。加えて咲洲の旧WTC(大阪ワールドトレードセンタービル)は、現在は西日本最高の府庁(咲洲庁舎)として利用されているが、いまだ利用されていない部分が多い、夢洲よりダントツに交通便の良い咲洲でも空きが多いのが現状である。
 なお、咲洲の向かいにはUSJや海遊館など家族で楽しむ大型娯楽観光施設が十分ある。
 結局、埋立中の夢洲IR計画は、巨大投資をしてカジノ付きホテルをつくるだけではない。むしろ府市自ら建設させた大阪咲洲のMICEと競合させ圧迫する。

*********************************************
研究    政府のギャンブル依存症調査と課題

日本政府によるギャンブル依存症対策は、その疾病の多さと重大性にもかかわらず著しく遅れている。ギャンブル依存症の存在と調査はカジノ導入のための対応として2007年に始められた。

1.ギャンブル依存症の認識と調査の歩み
(1)病としてのギャンブル依存の認識と診断基準
   アメリカでは、ラスベガスなどのカジノ産業の拡大と大衆化によって、マフィアとの斗いだけでなく客を病にする深刻な悲劇が生まれた。特に大衆向け民営カジノを許したアメリカでは1970年代からアルコールや薬物依存と同じく病的ギャンブルを依存症ないし障害(disorder)として医療が対処せざるを得ない状況を生んだ。
   こうして1960年代には「強迫的ギャンブリング(Compulsive Gambling)」、1980年代には「病的ギャンブリング(Pathological Gambling)」、「衝動制御障害(Impulse‐Control Disorder)」の一つという概念が生まれた。
   この発展は、ギャンブル依存について精神疾患としての診断基準の歩みからもわかる。
無題.jpg
  このようにアメリカでは、依存症の診療が着々と進められていった。

2.知られている国別のギャンブル依存症調査データ
(1)2015年10月発行「疑似カジノ化している日本」(ビッグイシュー基金 ギャンブル依存症問題研究グループ)の7頁に、ギャンブル依存症の有症率を国別に比較した表がある。
   この表は、1999年~2013年までの公表データを詳しく整理している。調査年、サンプル数、判定法が異なるため、デンマークの0.1%から日本男性の9%までの著しい格差がある。それは、DSM、SOGS、NODS、PGSIなどの判定手法による。格差だけでなく、その国のギャンブル種、市民のギャンブルへのアクセス度(容易度)とギャンブル規制情況の差が大きい。(日本の高さはパチンコ・パチスロの影響が大きいことは誰もが指摘するところである。)

無題.jpg
  ※ :その後の2014年公表データでは、サンプル4000人の調査で、成人平均は4.8%。

(2)欧州の調査(ビクトリアン責任ギャンブル財団 2017年11月レポート)がある。
   英文レポートにつき翻訳中であるが、69レポートを集めて21ヶ国のデータをまとめているのでこれを表化して紹介する。(不明点は空欄のまま)
無題.jpg
無題.jpg
   このように、規制の多い欧州でも有症率調査は早くから数多く行われていた。

3.日本のギャンブル依存症調査の遅れ
  日本は、ギャンブル(賭博)を犯罪としている。賭博開帳者や富くじ発売をする業者も客も犯罪者として取り締まる(刑法185~187条)。しかし、賭博が既に犯罪として禁じられているからといって、それだけで社会被害の発生をなくすための政府の活動の不十分さを正当化できない。
賭博は人の射幸心にかかわり一般人を誘惑する。その射幸心を利用した賭博の侵奪性について、まず考えるべきである。勤労努力を是とする倫理や教育精神にも反するがゆえに賭博を刑法で禁じるのであれば、賭博によって奪われる人の人権問題として救済が図られるべきであろう。
  しかるに、日本では賭博を主催する側・業とする側も、客となる消費者の側も、量刑こそ異なるが共に処罰することで由としていた。そこに日本のギャンブルにおいて、業者による客への人権侵害であるギャンブル依存症対策の欠落があった。
  また、企業社会は依存症を生む酒、タバコ、薬物など欲望を刺激し、ギャンブルのシステムを作り出しては拡大させてきた。それらのモノや手段を入手した結果は客の自己責任という固定観念にとらわれてきた。
しかし、それらの入手消費行動を客個人の自己責任にはできない。特に、射幸心という人の弱点を利用する行動の実態を正しく把握して消費者(客)に知らされ、安全のために政府による社会規制が必要だった。
  しかし、日本の政府は、戦時体制の下で自ら富くじにより庶民のタンス預金(これを財政政策者は浮動購買力と呼ぶ)の吸収(収奪)を始めた。以来、宝くじ、競馬、競輪、オートレース、モーターボートの公営競技、さらにスポーツ振興くじも作った。これらは全て射幸心を利用した政府や地方自治体の金集めであった。
  パチンコ・パチスロは日本独自の風俗営業で、元は子供のゲームだったものに大人向けのタバコなどの賞品を付け、さらに換金も可能にするシステム横行を許した結果、民間事業者による事実上の賭博となった。
これらの日本における賭博は利権産業を生み、中央・地方の官庁(総務省から警察まで)が利権を持ち、天下り、再就職先となる癒着を生んでいる。
このように自ら政府省庁が利権を持ち、賭博関係の民間業者も利権を持つに至っているので、政府は自ら賭博の様々な弊害を解明することを回避してきた。
ギャンブル依存症はその収奪事業の「副作用」であるが、政府はその解明を回避してきたのである。
そして、日本にカジノを導入する動きが具体化すると、ギャンブル依存に対して無策な政府への批判の声が高まった。
そのため、民間事業者によるカジノと共にパチンコや富くじ、競馬その他の公営ギャンブル事業について、ようやく政府はギャンブル依存を放置しておけないということになったのである。

4.政府公表の依存有症率低下の政治的背景
日本の厚労省委託のギャンブル依存有病率調査の結果は、2008年5.6%、2013年全国調査4.8%(人口推計536万人)、2016年都市調査(20170.3.31発表)2.7%(280万人)という。調査のたびに低くなるのは、IRやギャンブル肯定派が先の調査結果に対し多すぎると批判した結果である。

コラム      大阪市復興宝くじと万博カジノ

1.1945(昭和20)年7月、戦費調達のために、刑法で禁じられている富くじが1枚10円の「勝札」として2億円分発売された。しかし、8月25日の抽籤日は敗戦の10日後であったため「負け札」といわれた。
敗戦後も続いた「宝籤」と併せてその年の売上は計4.2億円に達した。物資不足の中、人々は景品の煙草を求めたのである。物資不足時代の景品には、1946年に煙草の他にズルケン、あめ、綿布、石鹸、DDT、傘、懐中時計、1947年には土地付き住宅までが加えられている。
  宝くじは、1等賞金が最大の販売戦略であり、10万円でスタートした賞金は、1947年には20円くじで100万円が当たるとして宣伝された(政府宝くじ)。政府宝くじは当せん金付証票法による戦後復興の資金集めとして行われていたが、1954年には中止となった。なお、その後も「当分の間」として地方自治体による戦後復興資金目的のみとなった。
  大阪市は、1948年より復興宝くじを発売した。1枚20円くじで、1等100万円が1本、その他石鹸や学生服などが当たるというものだった。それが1954年の第2回では1枚50円くじで1等400万円1本、そしてその前後賞50万円2本として射幸心を煽った。
  現在の全国宝くじは、全国都道府県と全政令都市により発売されている。昭和20年代は政府宝くじと競うように発売合戦が繰り広げられた。当時の宝くじは、日本勧業銀行を受託銀行としており、その後、第一勧銀と富士銀行の合併を経て、現在はみずほ銀行が受託者である。
  それにしても、1949年発行の第2回大阪市復興宝くじの絵柄(後記)をみると感慨を憶える。柴を背負い、歩きながら本を読む二宮金次郎の姿が描かれているのだ。当時まだどの小学校にも銅像が残されていた金次郎像は、勤勉勤労思想そのものを示していた。
しかし、宝くじは言うまでもなく人の射幸心を煽って買わせるものである。大阪市が戦後復興という建前において、本来刑法で禁止されている富くじというものを手段として使う無神経さをそこに見ることができる。

2.実は、その建前上の目的と手段の背反という無神経は2018年の現代にも起こっている。
  大阪の松井知事と吉村市長は、大阪の観光振興のため、夢洲にIRカジノを企画し、その前段階の手段として万国博覧会誘致に狂奔している。
  仮に観光振興の効果があるとしても、それが大阪府市民に平等公平に利益をもたらさない。夢洲という住民のいない遊興用地に1000億円以上の公共投資をする必要が一体どれだけあるというのだろうか。開催期間6ヶ月の博覧会では、公共投資の利益回収は到底できない。本音はIRカジノのための基盤及び交通施設の整備にむけた先行投資に他ならない。
  IRカジノの周辺に住宅地や教育施設は相応しくない。現にある南港地区の住宅や学校にとっても良くないことは明らかである。大阪府市の公共用地・公共施設が観光産業の名の下、ギャンブル産業に供せられるのでは、その目的も手段も共に悪いと言えるだろう。
  IRカジノが大阪府市民にとって福祉上等しく利益のみもたらすなら、府市が自ら公共事業としてやって良いが、地方自治体の府市が民営賭博開帳事業をかくも熱心にやる理由は全く見出せない。
3.宝くじが、戦災をはじめとする復興のためという建前はもはや失われている。にもかかわらず、むしろより一層射幸性を高めて発売している。
そして今、さらに政府や自治体が、世界中でギャンブル依存症や犯罪、マネーローンダリングを生んでいるカジノを推し進めているということをもし二宮尊徳が聞けば、働くことや学ぶことを尊び世に広める自己への嘲笑と受け取るだろう。
無題.jpg
*********************************************
◇◇ギャンブルオンブズ4コマ漫画◇◇
無題.jpg

コラム          ケインズの語るギャンブル
〇 これまでにも経済学者のギャンブル論については、アダム・スミス(1723~1790 「道徳感情論」「国富論」)の「宝くじ(富くじ)」の収奪性を語る言葉を紹介した(会報38号)。また、ノーベル賞を受賞した近代経済学者ポール・A・サムエルソン(1915~2009 経済学)の語る「投機」「賭け」「保険」の言葉を紹介した(会報41号)。
  その他にも、スーザン・ストレンジ(1923~1998 カジノ資本主義)は、まさに現代のグローバル化した資本主義について、金融資本がカジノといえるギャンブル経済の下でいかに「マッドマネー(狂気の金)」となっているかを説いている。
  このように真面目に社会・経済を考える学者は、マルクス主義系経済学でなく近代現代経済学の立場であっても、およそギャンブルを真に富を生み、国民を救う(経済)ものとせず、その対極にあることを語るのである。
  投資と労働とは異なり、投機は社会全体の富を増やすものではない。事業の安定経営を求める事業者にとって平準化に役立ってもその総コスト、経済負担は消費者に転嫁されるだけである。
  ましてゲームで金の取り合いをする賭博や、その賭博場のカジノが国民経済に負担を転嫁することはあっても、富や市民経済に貢献するところはないのである。
〇 今回、近代経済学の代表とされるジョン・M・ケインズの言葉を視る。
  ケインズ(Keynes.J.M 1883.6.5~1946.4.21 62歳で死去)は、イギリスの経済学者で「近現代経済学の祖」といわれる。ケンブリッジ大学、大蔵省の代表として第1次世界大戦後のドイツへの過酷な賠償に反対、金本位制に反対し、管理通貨制度を主張、保守党の自由放任主義を批判した。そして1936年の『雇用・利子および貨幣の一般理論』を著し、「ケインズ革命」といわれるほど経済学と経済政策に絶大な影響を与えた。第二次大戦中も戦時経済の実行に参画し、1944年のプレトンウッズ連合国通貨会議に英代表としてケインズ案を示し、アメリカのホワイト案と対立したことは有名である。
  『一般理論』は従来、経済学が想定していなかった不完全雇用下での経済均衡を解明し、自由放任でなく政府が経済に積極的に介入すべきことを主張した。雇用の水準は投資と消費からなる有効需要の大きさで決まるという「有効需要論」、投資量はその何倍もの所得ないし産出量を増加させるという「乗数理論」、利子率は投資と貯蓄が相等しい点で決まるのでなく、資産と現金の形で保有するか債権や証券の形で保有するかに関連して決まるという「流動性選好説」などを提示した。失業をなくすため、政府が経済に積極的介入する根拠と、租税による所得平等化政策、完全雇用政策で福祉国家を指向していた。
  ケインズは、単なる経済学者でなく、「時代の問題」に発言を行う行動者だった。そして自由党の革新、労働党の穏健化を主張した人である。
〇 さて、その『一般理論』の最終章24章で次のように述べられている。
 「われわれが生活している経済社会の際立って欠陥は、それが完全雇用を与えることができないこと、そして富と所得が恣意的で不公平なことである。」・・・「人間の価値ある活動の中には、それを完遂するために蓄財動機や富の私的所有という環境を必要とするものがある。さらに人間は危なっかしい性癖を持っているが、この性癖は蓄財や私的な富の機会があれば、比較的無害な方向に捌けてやることができる。このような形でこれらの性癖を満足させることができないとしたら、その性癖は残忍な行為に、あるいは個人的な権力と権能のがむしゃらな追求に、あるいはその他の自己権力の拡大に、自己の捌け口を見出すかもしれない。人間が同胞市民に対して専制的権力を振るうよりは、彼の銀行残高に対して専制的権力を振るう方がまだましである。時には後者は前者に至るための手段に過ぎないとけなされることもあるが、少なくとも時には後者は前者の代替的選択肢となるのである」・・・「だがこれらの諸活動を促進し、これらの性癖を満足させるには現今のような高い賭け金を払ってゲームを行う必要はない。もっと低い賭け金でもプレーヤーがそれに慣れてしまえば、目的のためにはそれで十分間に合うだろう。人間性を変えるという仕事を人間性も管理する仕事と混同してはならない。理想的な共同社会でなら人々は賭け事に興味を持たないといえよう。」
  以上は、岩波文庫の間宮陽介訳の引用である。そこでは賭け事をギャンブルでなくゲームと表現している。しかし、明らかに高い賭けは否定すべきとし、ギャンブルは富や所得の不公平欠陥を生み、理想社会では人は興味を失うという表現で必要性がないというのである。

伊集院静氏の「ギャンブルで得るもの、失くすもの」
~『大人の男の遊び方』(双葉社 2014)より~
まず、氏の言葉から。
・ギャンブルは逆転がきくケースは極めて少ない。
・ギャンブルにとって“無理”とは冷静な判断を失わせるものだ。
・マイナスで次の勝負を止めて次回ということがほとんどの人ができない。
・準備できないのに打つな。賭けの内容を見極める、自分の器量を知ること。
・ギャンブルは長い目で見ると決してプラスにならない。
・長くやればマイナスのギャンブルを続けるのは「次は負ける」と考えていないから。
・勝った記憶は鮮明、その何倍もの敗れた記憶は押しやられている。
・ギャンブルは記憶の遊び。
・菊池寛は「情報信ずべし、しかも亦信ずべからず」との名言。
・かつての生活はギャンブルを中心に全て回っていた。
・競馬、競輪、麻雀、海外カジノで打ち続けた。競輪は1年に100~150日。海外カジノに1回10日で入り浸り。それと麻雀。
・ギャンブルを長く続ける人は日銭の入る人。遺産は半年もたない。
・金を前借りし、鬼か狂犬しか見えなかっただろう。
・海外カジノ ソウルのウォーカーヒル、BJとバカラ
・飛び込みで賭けない。大半の人が負ける。カジノにいる時間を決めておく。
・カジノ側は客を熱い状況にし、どんどん賭けさせる。
・ヨーロッパの国営貴族カジノ、ラスベガスの収益民営カジノ
・カジノが倒産するのは客が来なくなった時だけ。
・パチンコにはまった人に注意してもむだである。
・ルーレットは何度かに一度0に入れるようシューターが訓練されている。
 このように氏の発言はギャンブル依存というレベルのものではない。氏は「かつて私の生活はギャンブルを中心にすべて回っていた」、そして「今は離れている」と発言している。ギャンブル依存という生き方について反省するよりも、むしろ、一流の遊びをしてこそ一流の生き方ができるとし、酒、ゴルフ、そしてギャンブルの麻雀、カジノの楽しみ方を「作家の遊び方」として週刊大衆に連載していた。こうした遊びについて書いては収入を得てまた遊んでいたのだ。ギャンブルが生む社会と本人への害は軽くしか触れない。
 
*********************************************
書籍紹介
月刊誌『世界』(岩波書店)連載「パチンコ哀歌(エレジー)」古川美穂
(1)第1回「産業としての黄昏。」 2018年3月号(2018.2.7発売)
  1927年大阪千日前で子どもの遊びとして営業が始まったパチンコは、1995年には3000万人の大人の遊技となり、今も道頓堀、千日前付近は1万台ものパチンコ・パチスロ台がある。このパチンコ・パチスロは2018年2月施行の出玉規制により「たそがれ」を迎えているという。
   これは、ギャンブル拡大化によりパチンコ依存症が増大してきた日本で、今IR法を推し進めるためにギャンブル依存症対策が求められ、公安・警察がとった出玉規制策である。1995年18000店を数えたホールは、2017年11月現在9693店と1万店を切ったという。もとよりこれは小規模店の減少、1店1000台超の大型店化がある。また1台40万円以上の遊技機新台と1円玉機の導入の低収入化という状況、ゲーム普及の下でのパチンコ離れ、カジノ導入を見据えた共同管理の可能性など、その行方を検討するとしている。
(2)第2回「正村ゲージ ―産業の黎明期」 2018年4月号(2018.3.8発売)
   名古屋のパチンコの父、正村竹一氏の「正村ゲージ」といわれるパチンコ台の発明から産業出発時代を紹介する。パチンコのガチャンコとパチパチの合成説など、名古屋の子供らのパチンコ機が大人のギャンブルマシーンとなったことを述べ、パチンコの景品買取から今日の三店方式確立まで、また「釘師」の消滅や電動式ハンドル、フィーバー機がパチンコの性質を変えたことを紹介する。

(第3回「30兆円産業への助走」2018年5月号 へと続く)

いろはカルタ賭博考(6)

く 「臭いものに蓋」(江戸)、「臭いものに蠅がたかる」(上方)
 臭いものに対処し醜聞を隠すこと(江戸)、臭いものは悪い者で同じ仲間が集まる(上方)。賄賂や悪銭を追う仲間も。射幸心(努力なし)で大金を得る臭いもの(賭博)には法の蓋(規制)がいる。蓋をとると「覚醒」という意味になる。「臭」は「鼻」と「犬」の会意文字で、悪いにおいに使われる。「口は禍の門(元)」といえば陰口ならぬ賭け口数の多いこともいうのであろうか。
 <苦しいときの神(紙)頼み> <籤で決まるの裁判員> <腐って増える射幸心>

や 「安物買いの銭失い」(江戸)、「暗(闇)夜に鉄砲」(上方)
 安いものを買って得したように思っても結局は損。安かろう悪かろうだった。「闇」は当てずっぽうの例え。宝くじは200~300円で億円を得ようという極端な安物買い。まさに闇夜に鉄砲である。「病は気から」「病は口から」の句もあるが、ビギナーズラック(最初に幸運)がギャンブル依存(障害)になることが多い。「柳の下の泥鰌(どじょう)」を求める気持ちがいつまでも賭けを続けさせる。
 <やめられぬギャンブル依存> <焼け石に水 家族の尻拭いはイネイブリング>

ま 「負けるが勝ち」(江戸)、「蒔かぬ種ははえぬ」(上方)
 一時負けても長い目で見れば自分が優位(江戸)。原因がなければ結果もない(上方)。昔は「負けるは勝つ」「負けるは勝ち」だったが、戦後「負けるが勝ち」の言い回しに。ギャンブルで「負けるが勝ち」はない。負けてやめれば被害が少ないだけ。だが宝くじなど「買わなきゃ当たらない」という宣伝コピーで客を誘う。公営ギャンブルは依存症という病気の種を撒いている。
 <まだまだは病気進行中> <学べぬ収奪される理> <負けても次は勝つと思う>

け 「芸は身を助く」(江戸)、「下駄に焼味噌」(上方)
 道楽の芸でも生活の助けになる。昔下駄と焼味噌を類似させるものがあったようで、似ているが実際は大違いという。道楽で賭博を覚えると、身を助けるどころか身を滅ぼす。同じ銀行商品でも預金と違って銀行が勧める投資信託や外為は賭け。保険は投機(=賭博性)で似て非なるものだが、大銀行までこの悪徳商品を年寄りに売る。
 <競輪競馬もボッタクリ博奕> <健康は博奕せぬこと>

ふ 「文はやりたし 書く手は持たず」(江戸)、「武士は食わねど高楊枝」(上方)
 恋文を書けず思い悩む。貧しくとも気位は高く持って生きよ。高楊枝とは食事後に悠然と楊枝を使う様をいった。今はスマホでメール。悩むよりSNSなど情報手段を使う。貧しくとも精神は豊かという教訓より、カネを追いかけるアベノミクスかカネノミクスでカジノミクスになっている。
 <夫婦別れはギャンブルから> <「福」は当てたし 当たりはないし>


ギャンブルNEWSピックup (2018.3.6~4.16)

2018.3.6  日経BP  カジノを含む観光拠点整備のアドバイザーを選定、大阪府市
  3.7   産経  自民IR検討部会、施設数は明示せず
      日経  IR実施法案、自公で協議へ
  3.8   毎日  カジノ入場料の容認 近く与党協議開始 自民論点整理
      東京  本人や家族申告でカジノ入場禁止 政府、依存症対策で方針
  3.12  <当会 会報第64号発行>
  3.15  沖縄タイムス  カジノ法案、自公協議へ IR箇所数で与党内調整
3.27  宮崎弁護士会  実効性あるギャンブル依存症対策の具体化等を求める意見書
3.30  金融庁  「ギャンブル等依存症に関連すると考えられる多重債務問題に係る相談への対応に際してのマニュアル」について を公表
  4.3   赤旗  カジノ3カ所に自公合意 「規制」骨抜き、事業者に奉仕
      東京  カジノ全国3カ所合意 自公IR法案 入場料議論は継続
  4.4   毎日  カジノ入場6000円 自公合意 月内に法案提出へ
朝日  和歌山)カジノ、国内3カ所 知事「全力尽くし入る」
陸奥  カジノ法案「賛否両論の中でどう進める」
信濃  「カジノ法案」与党協議決着 焦る自民 公明に大幅譲歩
  4.5   朝日  社説:カジノ規制 矛盾露呈した与党合意
NHK  大阪府民対象、IR世論調査NHK実施 賛成17%、反対42%
  4.6   中日  カジノ法案 社会の美風はどうなる
      読売  カジノ与党合意 副作用の除去は容易ではない
  4.8   愛媛  社説:カジノ法案与党合意 これでは依存症対策にならない
  4.10  西日本  カジノ与党合意 国民の懸念に応えたのか
  4.11  読売  IR誘致、宮崎知事「困難」
      ヘルスプレス  カジノの入場規制「週に3回」は立派なギャンブル依存!
      アジア経済ニュース  ゲンティン、日本でのカジノ免許申請に意欲
  4.13  <当会 会報第65号発行>
      日弁連  ギャンブル依存対策推進に関する意見書
  4.14  カジノ反対協  カジノ実施法制定に反対し、カジノ解禁推進法の廃止を求める声明
  4.16  朝日  世論調査 IR実施法案 今国会で成立させるべき22% その必要はない70%
日弁連  カジノ解禁推進法に関する意見交換会(第10回)開催





posted by inoue at 13:48| Comment(0) | 会報 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
コチラをクリックしてください
×

この広告は180日以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。