2016年01月29日

ギャンブル事業と消費税

第1.消費税法と課税要件
1.消費税法は第4条で(課税の対象)として「国内において事業者が行った資産の譲渡等(特定資産の譲渡等に該当するものを除く。第三項において同じ。)及び特定仕入れ(事業として他の者から受けた特定資産の譲渡等をいう。以下、この章において同じ。)には、この法律により、消費税を課する。」とある。
  この「資産の譲渡等」とは、第2条の(定義)の1項8号に「資産の譲渡等 事業として対価を得て行われる資産の譲渡及び貸付け並びに役務の提供(代物弁済による資産の譲渡その他対価を得て行われる資産の譲渡若しくは貸付け又は役務の提供に類する行為として政令で定めるものを含む。)をいう。」と定められている。
  この「対価を得て行われる資産の譲渡」について、反対給付があれば「資産譲渡」だが、無償による資産譲渡は該当しないと国税庁は解している。(消費税法基本通達第1節5-1-2)
2.以上、法律上の明記の法令はないが、消費税法6条1項の非課税対象、同法別表1四ハや消費税施行令11条の物品切手に類するものの範囲の規定引用により、宝くじ等は非課税取引という見解も一部にある。しかし、これらの法令をどう読めば、宝くじ等が消費税の対象外になるのかわからない。
  ちなみに、これらの規定に関係する消費税基本通達(6-4-3、6-4-4)とその逐条解説でも、宝くじが消費税の対象外になるとは書かれていない。
  むしろ、これら非課税の対象に入っていないことは課税対象というべきである。

第2.現状のギャンブルと消費税
1.パチンコ・パチスロ
  現在、パチンコ・パチスロの貸し玉、貸しメダルの売上(貸し玉料)について消費税は内税化されている。従来、消費税の規則には、パチンコ・パチスロについての取扱いが明記されていなかったが、2014年4月の増税時に貸し玉・貸しメダルの取扱いの関連法令が改正された。これによりホールは、組合単位で商品価格の改定などの動きが広がった。そして結果的に利益が上がり、歓迎されて採用された。
この消費税対応は、1000円当たりの貸し玉・貸しメダルの数を減らして増税分とする「個数調整方式」、貸し玉・貸しメダル料金に消費税分を上乗せして足し合わせ端数を清算する「金額調整方式」があったが、前者が主流となったといわれる。
  そうすると客が1000円で玉を借りた(買った)とすると、その1000円の内に8%の消費税が含まれて、玉が減っているパチスロ店は、その貸し玉1000円のうち消費税を支払っていることになる。貸し玉を仮に500円としても500円分の消費税内税分を納税する計算である

2.宝くじ券、スポーツ振興券(toto)
  現状、宝くじやスポーツ振興の「証票」「券」の発売については「対価性のない取引」との考え方をされているらしく、非課税扱いのままである。
  国税庁は、通達ではないが「消費税タックスアンサーNo.6105」(国税庁ホームページで消費税の運用についての考え方を示したもの)の中で、事業者が事業として対価を得て行う資産の譲渡等について、判断例を示している。それは、消費税の課税の対象とする一文の中にある。
「1 国内において事業者が事業として対価を得て行う資産の譲渡等
(1)事業者が事業として行う取引
   「事業者」とは、個人事業者(事業を行う個人)と法人をいいます。
   「事業として」とは、対価を得て行われる資産の譲渡等を繰り返し、継続、かつ、独立して行うことをいいます。
   したがって、個人の中古車販売業者が行う中古車の売買は事業として行う売買になりますが、給与所得者がたまたま自分の自家用車を手放す行為などは、事業として行う売買とはなりません。
   なお、法人は事業を行う目的をもって設立されたものですから、その活動はすべて事業となります。
(2)対価を得て行う取引
「対価を得て行う」とは、物品の販売などをして反対給付を受けることをいいます。すなわち反対給付として対価を受け取る取引をいいます。
したがって、寄附金や補助金などは、一般的には対価性がありませんので、課税の対象とはなりません。
また、無償の取引や宝くじの賞金なども原則として課税の対象になりません。
(3)資産の譲渡等
    消費税法上、「資産の譲渡等」とは、事業として有償で行われる商品や製品などの販売、資産の貸付け及びサービスの提供をいいます。」
  
この(2)の中に、無償の取引が対価を得て行う取引にならないとあるのは消費税法2条1項8号からして正しいが、わざわざ「宝くじの賞金なども原則として課税の対象になりません」としているのはいかにも唐突であるし正しくない。宝くじの賞金は、「証票法」13条でいう「当せん金品」であると思われるが、これについては所得税を課さないと明記されている。問題とするのは、宝くじの賞金に消費税を課税するかどうかではない。宝くじの販売・購入に際しての消費税の課題については正面から判断していない。
すなわち、この記載は、宝くじの販売・購入の取引についての消費税課税要件を誤解させるものである。宝くじの販売・購入は、事業者と消費者の間での寄付やチップではなく、例えば、ジャンボ宝くじなら1枚300円の有償取引である。消費者である客は、反対給付をもらう。要件を満たせば最大億円単位から少なくとも10枚に1枚は当たり、換金してもらえるという、有価性ある宝くじ券である。また、一度ハズレになっても、再抽籤して商品を与えるサービスも提供される。
その対価を宝くじについていえば、①要件を満たして大きな金銭を得られる期待権と②企画から当せん金受領に至るまでの事務コスト等実費の対価の双方を含むものといえる。
このように宝くじの販売は、事業者の有償取引であり、対価性も有するものであるから、消費税の課税対象たる「資産の譲渡等」にあたる。
それなのに、現状は適法な消費税の納税もなく販売が続けられているのである。
  宝くじの賞品という表現で消費税の対象外と解しているが、宝くじの賞金は「当せん金付証票法」13条で所得税は課さないと明記している。すなわち、宝くじについては消費税のなかった時代の証票法で所得は課さないとする明文があるが、これは消費税の課税要件には関わりないのに、タックスアンサーは混同しているのである。
  スポーツ振興券の賞金についてはスポーツ振興投票の実施等に関する法律16条でスポーツ振興券の当せんによる「払戻し金には所得税を課さないとしている」。
  この宝くじ券の販売について国税局は、投票券で「資産の譲渡等」にあたらないとも説明したいようだが、いかに払戻率が低く45~50%に設定しているとしても1等億円当たりくじから6等の販売額の払い戻し賞金が10枚に1本もあるから、単なる投票券、対価性のないチケット(券)とはいえない。そもそも巨額の賞金で大量の券を売っているのであって、この宝くじは消費税対象の入場券同様の切符であり、当せんという期待権に有価性を高めた券であり、対価性のある資産等の譲渡品といえる。この理は、スポーツ振興券でも全く同じである。

3.馬券・車券・舟券
  宝くじやスポーツ振興券の払戻率は50%以下と定められているが、馬券等販売収入は70~80%が券の購入者に配当される。もとより予想を当てた当せん者に分配されるので、1券あたりは宝くじほどの大当たりではないが、それでも数千~数百万円の大当たり(大穴)がある。この馬券の払戻金は1枚50万円を超えると1枚につき当せん金の約2分の1が一時所得となる。
  だが、馬券等の一時所得税課税と馬券等の購入販売にあたっての消費税賦課は別途考えられるべきである。この馬券等も当たりへの期待権に有価性を高めた券であり、「対価性のある」「資産等譲渡」というべきである。

4.なお、競馬場、競輪場、競艇場、ボートレース場への有料入場券は、劇場への入場券と同じであるから消費税は必至である。

第3.ギャンブル(公営競技、宝くじ、toto)の消費税推計
  消費税は、消費する客からの預り金のようなもので、店(売主)がその商品サービスを供給するための費用の支払いの中にも消費税を支払っているから、その差額を納めるシステムである。
  そこでギャンブルごとの売上から消費税総額は推計できる。
  ちなみに2015年度のレジャー白書にある2014年のギャンブル市場推計データによると、
 ①中央競馬は2兆4940億円であるからその8%は1995億円(億円以下切り捨て、以下同じ)
 ②地方競馬は  3750億円であるからその8%は 300億円
 ③競輪は    6140億円であるからその8%は 491億円
 ④競艇は    9790億円であるからその8%は 783億円
 ⑤オートレースは680億円であるからその8%は  54億円
 ⑥宝くじは   9790億円であるからその8%は 783億円
 ⑦スポーツ振興くじは1110億円であるからその8%は88億円
 で、以上①~⑦合計は5兆5420億円で8%では4433億円となる。これらの「脱税」は問題だ。

第4.最近の消費税と軽減措置と財源確保論議
  消費税を8%から10%に値上げすることを決めたのは、社会保障のための財源捻出だった。しかし、消費税は福祉目的税でなく、そもそもその目的は国民を説得するための詐欺的な説明だとの批判がある。しかも、2017年4月の10%値上げの際には低所得者対策として軽減措置を導入するという「公約」をどのように具体化するかは不透明である。
  既に医療、介護、保育などの自己負担総額の上限を設ける「総合合算制度」も見送られ、食料品減税で米、生鮮食品、加工食品、菓子・飲料、外食までのうち、外食を除く点で自公与党は一致したと公表された。その1兆円減税の財源確保、工面が先送りされるという参院選対策のデキレースとの非難さえある与党合意である。
  これからその財源のために財務省を中心に工夫もされようが、酒やタバコ、また高級物品への特別課税の現状を考えると、これらギャンブルという「商品」についての消費税課税は理論的にも法解釈上もなされるべきである。酒やタバコへの課税は売上を抑える効果があってもよいという保健衛生、社会政策にもよるものであり、ギャンブル依存症の抑制や過剰な賭け金抑制のためには加重的消費税さえ必要であろう。 
                           (Y)


posted by inoue at 00:00| Comment(0) | 会報41号 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
コチラをクリックしてください
×

この広告は180日以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。